黄昏色の詠使い Ⅶ 新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ / 細音啓

黄昏色の詠使い」シリーズ新章突入の第7巻。
これまでで提示されてきた情報や登場してきたキャラクター、それらが<ただそこに佇立する者>の目覚めに向かって収束し、そして新しい展開を迎える一連の流れがすごく良かったです。何か良くないことが起こりそうな予感と、少しずつ明かされながら核心には迫らない謎、そしてそれが起こる時間だけはきっちりと示され、そこへ向かってカウントダウンしていく流れは、すっきりしない不安を抱かせるに十分で、それだけに引き込まれるものがありました。
話としては、ミクヴァ燐片が発見されたという知らせを受けて、ネイト、クルーエル、エイダ、ミオが競闘宮のある凱旋都市エンジュに向かうという感じ。競闘宮での学生たちの試合、新しい出会い、そして物語はターニングポイントへと。舞台が変わり他の学生たちとの比較で見えてくる、ネイトやクルーエルたちの「異常」さ。そしてそんな彼らが集まっているという意味。アーマやアマリリス、そして何よりシャオの語る言葉から推察するに、ただの偶然ではなさそうなその事実が、名詠式というものの根幹すら揺るがす何かに繋がっていきそう。
そしてお互いへの想いを明確なものにしつつあるネイトとクルーエルの2人が、この先過酷でありそうな運命の中で、どんな道を描いていくか楽しみです。何はともあれ、新章はまだ始まったばかり。ここからはすべてクライマックスという作者の言葉に、否が応でも期待が高まります。
あと、新しくなった装丁は作品の雰囲気にとてもよく合っていて個人的に非常に好印象。そして実用的な部分では、裏表紙にあらすじが載るようになったことが良いなと思いました。