GUNSLINGER GIRL 9巻 / 相田裕

GUNSLINGER GIRL 9 (電撃コミックス)

GUNSLINGER GIRL 9 (電撃コミックス)

「おじさんは・・・ パスタ好き?」

アンジェ……。
この表紙を見たときに「あぁ」と思って、帯だけでちょっとうるっときたガンスリ最新刊。本編を読んだら涙腺が決壊しました。
しかしこのマンガの恐ろしいところは、自分自身がどうして泣いているのだか分からないということ。確かに泣けるのに、切ないのか、悲しいのか、悔しいのか、いまいち判然としないもやもや感。例えばこれを重病の女の子が段々と記憶をなくしていく話として見れば完成度は高いですし、そういうストーリーだったら素直に巧いなぁと思いながら感動して泣けるのでしょうけど(それはそれでどうかという話もありますが)、この作品の場合その表面事象の基盤部分が捩じれすぎているので。
もしアンジェが「幸せだった」と言ったとしても、「条件付け」が存在している以上それが贖罪にはならないはずですし、そもそも義体として使役した以上職員の行動も、何とか義体を生かしてやりたいと願う担当官の想いもどこまで行っても埋め合わせのための偽善にすぎない訳で、だからといってそのまま死んでいたのと比べて彼女はどちらが幸せだったと問われれば返答に窮する部分もあり。実際義体の研究成果がもたらしたものも見せながら、彼女たちは「条件付け」という洗脳を施されていることを彼女たちの行動や言動から描いて見せる様はなんかもう薄気味の悪さすら感じます。常識的な倫理観をさらさらとした手付きで解体していくこの悪趣味。そのスタート地点は、担当官に無償の愛情を持つ銃を持った女の子が闘うという流行のパターンなのだから余計にキツイものがあります。
でも、そういう部分をごちゃごちゃと考えなくても普通にマンガとして見ても面白いという。サンドロとペトラの関係は見ていて面白いですし、アンジェリカの話はやっぱり感動して泣けるのです。だけどやっぱり素直には楽しめないという、この胃に針が刺さったような感覚がガンスリの醍醐味でもあるのかもしれません。
満足度:A