ベン・トー 2 ザンギ弁当295円 / アサウラ

仕掛けられた東区と西区の争い、その裏に蠢く野望。そして始まる、狼の誇りをかけた闘い。
だからお前らはどうしてそんなに熱いのかと不思議になるの半額弁当争奪バトルアクションギャグ小説。前巻にも増してバカで変態な前半に笑っていたはずなのに、気がつけば後半から終盤にかけての展開の熱さに震えていました。半額弁当を賭けて闘うことに誇りも何も無いだろうと冷静に考えれば思うのに、狼たちの生き様はどうしてこうも無駄にカッコ良いのか。
佐藤の従妹で幼馴染にして「湖の麗人」の二つ名を持つ著莪あやめの来訪から始まる物語は、キャラの濃さと、色々とおかしいネタと、佐藤の加速するバカさ加減で、変態的にアクの強いギャグな感じ。思わず「作者は病気」とタグを付けたくなるくらいの勢いで繰り出されるネタの数々は、イベントのレベルとか発言のレベルとかではなく、もはや文章のレベルで何かがおかしい気すらします。
しかしそのノリは保ったまま後半に入ると、半額弁当を巡る闘いに己をかけた者たちの人間ドラマが予想を裏切るシリアス度で始まります。今では引退し半額神となった「オオカバマダラ」という伝説の狼。彼女の姿をそれぞれに追った者たち。今この場で狼としての誇りをかける者たち。あやめと佐藤の間の繊細な恋愛模様。「帝王」による計画の実行と共に迎えるクライマックスは、それぞれの想いがぶつかって本当に熱いものがあるのだからもう。
1巻に引き続き、大混戦の戦闘をビジュアルイメージが浮かぶように描き切り、弁当の描写は本当に美味しそうで、ストーリーもきっちりとまとめてくる辺りはさすが。それなのにどうして「才能の無駄遣い」という言葉が頭の中を巡るのでしょう。とはいえ、これはこれで正しい気もしますし、何より最高に面白かったと思うのですが。
クセはありますが、濃密な一冊でした。まさしく怪作という言葉が似合う作品だと思います。