- 作者: 三雲岳斗,Gユウスケ
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/01/01
- メディア: 文庫
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幻書を巡る事件にダリアンとヒューイの二人が関わっていく短編形式なのはこの巻でも変わらず、落ち着いた雰囲気の文章もあり読んでいてとても安心感があります。話に進展があるわけではないのでマンネリではありますが、ダリアンとヒューイのやりとりや、幻書の力に魅せられた人々、幻書がもたらしてしまった災に巻き込まれる人々の少し悲しい物語が面白いです。
幻書が絡んでくることで少しダークで幻想的な色合いを見せるそれぞれの短編は、古城の地下に幽閉された紅い狂気の少女とか、幻の楽曲を演奏する機械人形とか、モチーフだけでそういう感じのものが好きな人にはたまらないものがあるかなと。個人的にはこういう系統のものが大好きなので、これだけでも十分に満足できる部分がありました。
そしてそんな暗い雰囲気になりそうな物語を、沈ませないのがヒューイとダリアンのキャラクター。揚げパンに目がなくて、ヒューイに罵詈雑言ばかり投げつけているダリアンとヒューイのやりとりは生意気な妹と良くできた兄のようで微笑ましいです。そしてそんなダリアンが、幻書の力に道を狂わされた人々に見せる、冷たくもあり、温かくもある視線は達観しているようで、普段の姿とのギャップが魅力的でした。
そんな感じで満足感の高い一冊。この二人の物語を、もっと読んでみたいなと思います。