グッドナイト×レイヴン / 深沢仁

グッドナイト×レイヴン (このライトノベルがすごい! 文庫)

グッドナイト×レイヴン (このライトノベルがすごい! 文庫)

スリの少年、マネキンのような少女、女装癖の少年。3人の少年少女は怪しげな男に誘われて、怪しげな仕事をはじめる。それは1回7万円の報酬で夜中に人に家に入りあるものを盗む危険な仕事で、というお話。
こだわりがないというか、理由がないというか、読んでいて感じるのはサラサラとした印象。夜の街の冷たい空気は無関心からできていて、悪夢に絡んだ超常的な要素を含む仕事はイリーガルであるとともに現実感が薄くて。そこに何かがあることはしっかりと描かれているのに最後の最後まで、さらっと触れるように過ぎ去っていく雰囲気は、夜の夢を垣間見たような体温と実感に乏しい感じがして、でもその感覚がとても気持ち良いと感じる一冊でした。クールでスタイリッシュというにも少し違って、無機質というには少年たちは生身すぎて、でもどこか地に足がついていないというか、モノクロがかった効果の掛けられたフィルムを見ているような。
そんな中で描かれるのは3人の少年少女の関係でもあって。最初はお互いに関心すら無かった3人の間に生まれる不思議な連帯感。お金が困るほどないわけでもなくスリを働く少年も、女装して男とデートすることでお金を稼ぐ少年も、あまり喋らない人形じみた少女も、どこか普通の世界からは外れてしまっていて、だからこそ夜の街で危険な仕事をしながら一緒にいることが自然で、絵になるように感じます。生真面目さと歳相応の子どもらしさと、歳不相応な擦れた感じが同居する中で、瞬間瞬間で普通の友だちにも見えるような、けれどこの仕事がなくなればぷっつりと切れるような、一歩手前な関係。
それが、この作品の持つ空気と合わせて、不思議な居心地の良さを生み出しているように感じる一冊でした。この感じが私はすごく好きです。