大日本サムライガール3 / 至道流星

大日本サムライガール 3 (星海社FICTIONS)

大日本サムライガール 3 (星海社FICTIONS)

ここまでが序章、さあここからが本番だというところまで進んだ3巻。これは非常に面白くなってきたと思うと同時に、やっぱりこの人の作品は革命の物語なんだと強く感じる一冊でした。
アイドル神楽日毬の話としては、ファッションブランド『Kagura』立ち上げの話がブランディングケーススタディのようで面白かったです。大手広告代理店蒼通主導の流行りものの創り方。質と広告の両輪が回って初めてヒット商品は生まれるという当たり前のことが当たり前に前に進むことのカタルシス。ゴーストデザイナーはしっかりと用意された中でも、自分も何かデザインに関わっていこうとする日毬の姿勢。ステッチラインという生産基盤にメディアやサクラを如何に使っていくか。
サクラにサクラと思わせないでサクラをやらせるとか、ひまりプロダクションや蒼通が利益を生み出すしくみとか、どこまでがリアルかはわからないですが、ただ綺麗事だけじゃない内側からのリアリティがあって面白かったです。そして清濁混ぜあわせたようなこの手法がここで提示されることは、たぶん日毬の政治活動にも影響を与えるものなんだろうなと。
相変わらず上手く行きすぎな気はしなくもないのですが、多分そんなことより目指している先が遥か彼方なので、こんなところで転んでられないのだろうと。そしてそれが気のせいではないと思えるのは、日本大志会の党首としての日毬の姿があってのこと。まだファンクラブでしかない党大会での演説から、見つけ出した活動家である壮二を引き入れて体制は強化。そしてひまりプロダクションとは別に進むかにみえた道が、この巻のラストで一つになったのがお膳立てが整った感じがして燃えるものがありました。
日毬の政治的主張と相容れず、そのせいで目的地が乖離しているようにみえた颯斗と日毬の関係。それを、颯斗のスタンスが明示されることでひとつの方向を向いたこと。ひまりプロダクションのプロダクションとしての部分は凪紗をアイドルに迎え、由佳里を蒼通から引きぬいて固めつつ、歳相応の弱さも見せる日毬を颯斗が引っ張り壮二が支え、アイドルを目指しているわけではない日毬の目標に向けて走る準備は整ったという感じ。そしてそこに舞い込んだ冠付きの政治番組への司会のオファー。アイドル+右翼キャラだった日毬が政治的発言をメディア上で行なっていく事を主体とした時にまきあがる火の粉は想像するだけでも多すぎて、けれど彼女たちなら何かを変えてくれるような気がして、次の巻が俄然楽しみになってくる一冊でした。