たったひとつの、ねがい。 / 入間人間

この表紙で冒頭から入間人間らしいバカップル模様が展開されて、メディアワークス文庫入間人間はこういう話が多いなと思わせた後での急転直下。ド直球の復讐譚でした。
奪われた彼女、奪われた腕と足の自由。それでも地の底から這い上がるようにして車椅子に乗って追いかけるのは、彼女を奪った4人の男たち。理解できる理由すらすべて乗り越えて、一人ずつ、一人ずつ殺していくような、狂気の復讐劇。誰も彼も同情の余地なんて無い惨劇が、エグいのに軽いという作者らしい描写で描かれていくあたり、ああこの人はみーまーの作者だったなと最近忘れそうになっていたことを思い起こさせたり。
ただ、このお話はどこを楽しめばいいのかわからない類のものだと感じたのも事実。一直線に駆け抜ける復讐はその過程を楽しむ余地もなく、登場人物は一切の感情移入を禁じているかのようで、狂気としては真っ直ぐすぎて、そうなってくると本自体に仕掛けられた仕掛けもそんな感じとしか思えず。せめて、俺と羽澄の交流にもう少し深入りしていればまた感じるところがあったのかも知れませんが。
あとがきにオーダーが「シンプルな復讐モノ」だったと書かれていて、なるほどその通りなところに作者らしい味付けがなされた作品ではあるのですが、それにしてももう少し何か面白みが欲しかったと思う一冊でもありました。うーむ。