マホロミ 3 / 冬目景

このシリーズはどちらかと言うと幻影や羊のような乾いた作風の冬目景なのだと思っていたのですが、ここに来てぐっと柔らかい感じになって、そしてそれが凄くハマっている感じです。
お坊ちゃまな石蕗くんがおんぼろ男子寮に放り込まれる「漸の桜」も、そこで暮らす人々を見て少し考えを変えているようで、最後まで変わらないものは変わらなかった石蕗くんが良かったですし、「彼女の名画座」の大人たちの恋愛模様と解体された名画座の話も素敵な感じでした。特に事務所から独立した男とそれについていかなかった女の10年越しの咲かなかった恋の話が、非常に良くて! 名画座を中心にした再会とお互いへ残る想い、それでももう交わらない、あの時に決定的に分かたれた道、みたいなのがとても好みでした。
そして土神周りの恋愛模様も、一人作品の中でも別の閉じた世界にいるような真百合と彼女に色濃く残る亡き祖父の影というものがはっきりと見えてきて、これからどうなっていくのか俄然楽しみです。