高海千歌は高坂穂乃果にはなれない -ラブライブ!サンシャイン!! 3話感想-

アニメが始まって、無印の時に一つのポイントになっていた3話まで来たラブライブサンシャイン。μ'sに転んで人生の方向性が30度くらい曲がった反省を糧に、適切な距離感でのお付き合いをと思ってあまり情報も仕入れずにここまで来ていたのですが、アニメ始まったらめっちゃラブライブとしか言えない何かで面白いし、ここに来て方向性みたいなものが見えてきたところもあって危険が危ないです。
そんなこんなでちょっと3話まで見たところでの印象を。

まず、サンシャインの世界ではμ'sは伝説です。観客ゼロのスタートからトップを取ってスクールアイドルというものをおそらく全国レベルの存在まで押し上げて解散したグループがμ'sであって、主人公である千歌はそれに憧れてスクールアイドル活動を地方都市で始める、たぶんあの世界に掃いて捨てるほどいるだろうμ'sフォロワーの一人です。
ラブライブという作品は物語と現実がリンクしながら一つの大きな流れを作っていくのが特徴でしたが、μ'sの物語としてのラブライブは作中で社会現象を起こして解散からのドームライブを示唆した映画版で伝説となり、声優ユニットとしてのμ'sもまた社会現象を起こして紅白出場からの解散ドームライブと力技で伝説まで持って行ってしまった。これがサンシャインにとっては前提になっています。
で、その後継プロジェクトのAqoursが問われるのはその伝説のμ'sと比べてどうなのか。彼女たちは端から前代未聞の道を飛んでいってしまった伝説と比べられる宿命と、その伝説が築いてきた自分たちとしての活動とは無関係に得られる人気を背負ってスタートした訳です。CDはデビューシングルからガンガン売れるけれど、スクフェスのアイコンがAqoursに変わった時にも出ていたような「μ'sの方が良かった」の声を「AqoursAqoursで良いじゃないか」にひっくり返さないと、二番煎じのレッテルからは向け出せない。
そしてこれはラブライブなので、現実に起こっているその状況はもちろん作中とリンクする。
ダイヤが実はμ'sのファンで、スクールアイドルを始めようとする千歌にμ'sと比べてどうのだとか、スクールアイドルのこともよく知らずにどうのと突っかかるのは、まさにこういう声の代弁だし、Aqoursはこの先それを内包した上でグループとして成立しなければいけないということです。
そしてμ'sが観客ゼロからのスタートを切った3話で、Aqoursは体育館いっぱいのファンを集めて成功のスタートを切ります。でもそれは、ダイヤがやっぱり突っかかるように、μ'sが築いてきたスクールアイドルというものの人気と身内の優しさであって彼女たち自身が評価された訳ではない。だって、実際のAqoursがμ's人気の延長で最初から売れているのだから物語だってそうとしかならない。


ただ、その3話でμ'sを追いかけ、ストーリー構成もキャラクター配置もμ'sの物語をなぞるように進んできたこの作品で、明確な差異があったように思うのです。
それは、高海千歌は高坂穂乃果にはなれないということ。
ひいては、Aqoursはμ'sにはなれないということ。
最初の公演で逆境にあたって追いつめられた時に、それでも自分の気持ちで跳ね返した高坂穂乃果と、周りの助けがなければ折れてしまいそうだった高海千歌。そしてその助け自体がμ'sの築いた人気によって生まれたものであること。普通星人と言われている時にお前のような普通がいるかと思った千歌ですが、そういう意味で普通の子でした。今のところ叫んだだけで雨をやませられそうにはない。
伝説にまでなった穂乃果はカリスマだったし、超人だった。現状、千歌はそれに憧れる凡人でしかない。だから、それに憧れて追いかけたって、どこまで行ってもμ'sフォロワーでしかないし、たくさんあるコピーの一つにしかなれない。μ'sに憧れ、μ'sの歩んだ道を追いかけるように進むこの物語の中で、μ's以上の成功を収めたファーストライブの裏に、その方向性での限界が早々に見えてしまったというのが3話時点でのこの物語のポイントなのかなと。
まだしばらくAqoursの物語はμ'sを焼き直すように進んでいくと思うのですが、それがそのままデッドコピーで終わってしまうのか、あるいはどこかでμ'sではないAqoursとしての個性を確立していくことができるのか。だとすればそれは仲間の力なのか、はたまた別の条件なのか。あるいは違う個性ではなくて、同じ道の果てにμ's超えを果たしてしまうような限界突破の成長が見られるのか。


個人的には、願わくばこれは偉大すぎる開拓者だった先人に憧れた凡人が、その背中を、歩んだ道を追いかける中で、それとは違う何者になれるのかの物語であって欲しいと思います。
そしてそれはまた、声優ユニットとしてのAqoursが、声優ユニットとして規格外の成功を収めたμ'sと比較される中で何者になっていけるかという現実にリンクしていく物語であればと。


ひとまず3話まで見たところでの感想というか、希望はそんなところで。
もし本当にAqoursというプロジェクトがそういうアングルで描かれていってくれれば、ちょっとそれは追いかけなくちゃいけないし、1stライブで彼女たちが何を見せて何を語るのかが気になちゃうしBD積まなきゃいけないのかなあ、みたいな、ね。