嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん5 欲望の主柱は絆 / 入間人間

このシリーズに対しては好きという感情が先行して、どうにも冷静に語れないような気がしてきた第5巻。
前巻で元僕の家、現大江家に大江一族と共に閉じ込められた僕と伏見。当たり前のようにクローズドサークルな密室殺人が巻き起こる屋敷内で徐々に壊れていく住人たち、と思ったらなんだ最初から全部壊れてたよ的な解決編。
頭部を殴打され両腕を折られて監禁された僕、常識人であるが故に精神的に追い詰められる伏見、そんなギリギリの状態の中で明かされていく真相は、どこから顔をしかめればいいのかわからない狂気に満ちたもの。犯人だったあの人も、犯人ではないあの人も、一体どれだけの歪みを密閉空間の屋敷内で醸成していたのかと空恐ろしくなるほどです。
ただ、常識と倫理に背を向けた反吐の出るような真相を、それでもエンターテイメントちっくに仕立てあげてしまうのがこの作品のこの作品たる所以。客観的な気持ち悪さを虚言で塗りつぶしたような語り口で主観的な気持ち良さに変換してしまう辺り、大変悪趣味な快感を提供してくれる素敵な小説だと思います。
そして世の中から一線を引いたような態度を維持しながらも、生命的な意味で確実に追い詰められていくみーくんの描写はゾクっとするものが。人が壊れていく過程という意味だけでなく、斜に構えて諦観して狂っていてでもやっぱり切り離されてはいないというみーくんの怪しい足場が、本人が追い詰められるほど露呈してきて愉快なのです。
そんなこんなの5巻を経て、次はまーちゃんと向き合う話になるのでしょうか。閉じ込められた結果か今までに増してみーくんべったりな伏見に、みーくんと繰り広げる張りぼてのような会話が最高だった湯女など火種になりそうな事柄を抱えて、みーくんとまーちゃんがどこに向かっていくのか、期待して次を待ちます。