ファンダ・メンダ・マウス 2 トラディショナルガール・トラディショナルナイト / 大間九郎

ヘロイン10キロと狙われるキンバ。イカれたキャラクターたちが夜の横浜を舞台に繰り広げる狂想曲。ハイテンポで独特のリズムを持った文体で描かれるのは暴力と狂気。それなのにどこかポップな軽さは保ち続ける、ネジのふっ飛んだような高揚感のある作品でした。
文体が突き抜けているのでそこに気を取られがちですが、どいつもこいつもぶっ飛んだキャラクターたちが入れ違いに動きまわり、横浜を舞台に繰り広げられる復讐劇の輪郭がだんだんと明らかになっていく構成は面白かったです。ディディエ・マァとキンバリー・マァの思惑、暗躍していそうなロンの思惑、そして手駒として泳がされる美月とリオ、とりあえず暴れるアマル、なにか裏でやっていそうなブレイン、ここぞの場面で絶対の存在感を見せるミツル、そして彼ら彼女らの物語を受け止めるのはマウス。
マァ兄妹の過去、そして今。どう考えてもまともではないその世界を、真正面から引き受け、狂気が渦巻く街の底のように、何もかもを愛して、受け入れる。イカれたキャラクターたちの乱痴気騒ぎ、その闇全てがマウスのところへ流れこみ、血だらけになりながらでもそれを飲み下す。聖人ではなく一人の人間としてそれを行うマウスの姿はおおよそ狂気じみていて、そこがマウスというキャラクターの凄みなのだと感じました。
そしてこの巻では美月の頑張りも印象的。何でも自分で片付けないといけないと思ってしまうのは非常に危なっかしいのですが、それでもこの頭のおかしな面子の中で、女子高生である美月が自分なりに考えて自分の闘いに真正面から立ち向かう姿は素敵でした。ロンが賢い子と呼ぶのも分かるような聡明さも魅力的だと思います。
個人的にはこの作者の表現とリズム感は若干苦手なところがあって、その部分でちょっと楽しみきれないところはあったのですが、読んでいるときの感覚に独特な魅力のある作品だと思います。1巻を読んだ時にも思ったのですが、この作者の手でこの先どんな作品が生み出されるのか、楽しみに感じる一冊でした。