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血潮の色に咲く花は / 霧崎雀

血潮の色に咲く花は (ガガガ文庫)

血潮の色に咲く花は (ガガガ文庫)

小学館ライトノベル大賞の審査員特別賞ということで、新房監督が選んだ作品と聞いてイメージするものまさしくな一冊でした。そして私はこの作品の持つ世界と空気が超好みです。すごく好き。
人に寄生する花が存在する世界で、その花に寄生された人、宿主を狩る花狩りとして生きる青年。寄生された時点で宿主は人として生きてきた記憶をすべてなくし、頭に仮花を咲かせて、その花を咲かせることを至上の価値として生き始める。そんな花に家族を奪われ、信念のもとに宿主を狩り続ける青年ルッカが宿主である美しい少女リディと出会ってという話。
花狩の青年と、宿主の少女。その二人のボーイ・ミーツ・ガールであり、異文化交流の物語であるというのがこの作品の根幹ではあると思うのですが、その描き方がちょっと変わっているような印象。消して相容れない二人が惹かれ、そして悲劇に至る王道を逆に行くように、出会った時点でルッカが抱いているのは宿主に対する殺意、しかも殺すことで宿主を救うという題目を掲げた上での。それなのに、殺しやすくするためという理由で彼は宿主に近づいて、交流を持っていきます。
このルッカの行動は読み始めた時からどこかちぐはぐで、それは彼の過去が明らかになっていく中でもどうしても腑に落ちないように思えるのですが、案の定というか、まさにそこから彼の世界は崩れます。義妹を奪った花への恨みと、彼が奪った宿主の命。復讐というよりも救済を求めて、宿主というもの全てに牙を向いて、その実許されたがっている。止まったら壊れてしまうから止まれずに、身を削りながら宿主を狩り続ける彼を壊して、変えるのは、リディという変わり者の宿主の少女。このどこか不思議で、けれど可愛らしい少女がとても魅力的な物語でもありました。
彼女が彼にもたらしたもの、そして彼が彼女に与えていたもの。種族を超える二人の繋がりが導く物語の結末は大団円ではなくても美しいものだとは思うのですが、それはまたルッカの振り切れていた針が、リディの存在によってもう片方に振りきれただけのようにも見えて。
人格が塗り替えられてしまい、それは元の人ではないとするなら、宿主となった時点で元の人の命は奪われていて。それなのに、宿主は人の言葉を介して、人とコミュニケーションが取れてしまう。宿主という一つの人格は生まれた時点で人殺しの罪を背負っていて、けれど彼女たちの倫理のなかでそれが問題となることは決してなく、残された人には復讐の芽を植え付け続ける。宿主として出会ったリディという個体に対してどれだけ心を通わせようと、ルッカがあれだけこだわったように、やはりリディを失わせた花をきっとどこかで誰かが恨んでいる。種としては決して相容れないはずが個としては絆を深めることができてしまうというのが、多分この作品世界の中で決して答えの出せないものであるのかなと思います。そして、だからこそ、この先を、宿主であるリディの物語をもっと読んでみたいなと思うのです。