りゅうおうのおしごと! 7 / 白鳥士郎

 

 意味がわからないくらい熱くて、めちゃめちゃ面白いです。凄かった。ここに来てちょっともうとんでもないですね、このシリーズ。

今回の主役は八一たちの師匠である清滝鋼介九段。身体も頭も衰えは隠せない、オッサンというか初老に差し掛かる年齢の彼が、順位戦という将棋界のシステムの中でC級1組への降級崖っぷちで見せる足掻きっぷり、最高にみっともなくて、最高にカッコよかったです。おじいちゃん先生輝いてたよ……。

とんでもない大ポカも増えた、体力も気力も続かなくなった、最新の研究にはついていけない。飛ぶ鳥を落とす勢いの若者たちが、自分の過去を否定して昇っていく。そんな引退の見え始めた下り坂で、名人挑戦者だった過去とプライドを振りかざして、かつてあれ程嫌っていた老人に自分がなっていると気がついた時に、たどり着いた気持ち。はるか格下の若者に頭を下げ研究会を開き、嫌っていたソフト研究も取り入れて、周りから見たらおかしくなったかと思われても、何をしてでも勝ちたいんだという想い。未来の名人とまで呼ばれる神鍋を相手に回したまともにやったらどうしようもない最終戦、八一たちが見せてきた諦めない関西将棋の真髄を、その師匠の姿に見ました。いやほんと格好良かった。

そしてこの小説、そんな師匠の物語や、師匠と八一たち一門、そして愛娘桂香さんの関係だけで一冊書けそうなのに、天衣のマイナビ本戦や勢いに乗る八一の昇級の掛かったリーグ最終戦もあるという異様な密度。それを研究と定跡で読みを省略する現代将棋、将棋ソフトの見せる新しい景色、いつしか忘れられた過去の差し筋という対比や、ソフトの指す将棋と人間が指す将棋という現在進行系のテーマで貫いて、一つの流れにまとめ上げてるのがちょっともうやばいです。

なんというか、構成が洗練されているというより、トップギアに入ったまま落ちない熱量で、このキャラクターたちのドラマと将棋界というものを描ききるんだという執念めいたものを感じます。そして最終的に、人が指して、人が勝って、人が負けるから、その泥臭さも、残酷さも、醜さも全て含めて将棋は面白いんだと、物語の力でねじ伏せるように実感させるのが本当に凄まじかったです。

あと、姉弟子は放っておいたらあまりに危うすぎる人だと思うので、八一は何かしら責任を取った方がいいんじゃないですかね。あの子だけどうやっても幸せな未来がイメージできないんですけど……。