Just Because! / 鴨志田一

 

 素直じゃなくて、拗らせて、面倒くさくて、でも真っ直ぐな高校生たちの恋模様。この原作小説を読んでアニメも全話見たのですが、泉と夏目に焦点を当てて内面描写多めの小説、相馬と森川の関係を含めて群像劇として描くアニメ共に素晴らしかったです。

卒業3ヶ月前に地元の高校へ戻ってきた泉。旧友と、想い人との再会。片想いが連鎖する恋模様は、押せ押せな感じではなくて、もどかしくて切ない感じ。5人の交流が表面化させたのは隠し通すはずだった拗らせきった片想いで、抱え込みながら、抱えきれないそれは本当に面倒くさいな君たちという感じですが、彼ら彼女らは一人として性格が悪かったり嫌な子だったりする訳ではないので、前向きな気持で読むことができます。

受験に推薦、初詣、野球、部活動にLINEのグループ。ちょっとしたトラブルも含めて、実在の街で描かれるのは高校生らしい出来事。その中でそれぞれの気持ちが、少しずつ、ある時は思いがけず動いて関係性が変わっていく、そのさじ加減が絶妙で、流石に青春ものに定評のある作者だなと思いました。特に夏目が相馬への気持ちに整理をつけてからの、小宮の先輩をデートに誘ってもいい? からの「ダメ」はすごいキレだったなあと。口ごもるのでも、流すのでもなく、思わず出たダメってまた。この辺り、エピソード追加もされていたアニメ版も毎回の引きが強烈で面白かったです。

それから、もう明らかに負けヒロインとして登場しているのに、泉に一番まっすぐに恋をしていた小宮さん。本当に良い子で、なんで幸せになれないんだろうと思うのですが、ただこの子も夏目を好きな泉が好きで、負けると分かっているからこそあんなにまっすぐに動けていたような感じもあって、それはそれで拗らせていたんだろうなあと。

「だって、そういうえーた先輩を、私は好きになったんじゃん」

負けヒロインの台詞として、これ以上に切なく、美しいものはないって思います。

そんな感じのほろ苦くてだだ甘な青春恋愛小説。あと人生二回分くらい徳を積んだら、来世の来世のその次辺りでこんな青春送ってみられるのだろうかと思いつつ、堪能しました。