2018年に触れた8の沼

今年もよく足を滑らせた。

小説とマンガの話は別に書きます。

 

1.アイドルマスター シンデレラガールズ

ドレミファクトリー!

ドレミファクトリー!

 

 毎年言ってますけど、こんなに私シンデレラガールズ好きなんだなって思った年はないっていう感じで。だってあの最高のドームライブがあって、そこでの大々的な新アイドル発表から、昔と何一つ変わらない雑な個性のみを身に纏ってあかりんごが投入されるなんて思わないじゃん? そうだよこれがモバマス……って思いました。

そしてドームツアー4公演。最高。前回ツアーで組んだ基礎の上に、パフォーマンスもセトリも演出も全部が噛み合って花開いた感じだった。あれだけの出演者数がいる中で、出し惜しみ無しで様々な工夫を盛り込みいろんなPを殺しに来るライブ初めてだったのではという感じ。シンデレラガールズというコンテンツを全身に浴びて無事死亡、みたいな感じの4公演でした。

そして今年何が起きたかといえばもうU149ですよ。キャラクターの描き方も、ストーリーもとにかく丁寧かつ愛情が感じられて完璧なんですけど、1月に2巻が出て、結城晴に声がついて、前から好きではあったビートシューターに気がついたら深みにハマっていたっていうのが大トピック。そこからは運営のプッシュが晴にかかって怒涛の展開で、そしてメットライフドーム2日目ですよ。ああ、これが感情。

それでね、来年はね、梨沙にね、声をつけたいんです。ちょっと遅くなってしまったけれど、相方は随分先へ行ってしまったけれど、隣に立たせてあげたいんだ。

 

2.プリンセスコネクト!Re:Dive

Lost Princess

Lost Princess

 

 元々触れるつもりはあんまりなくて、実際始めたのは配信開始から1ヶ月後くらいなのですが、未だに続いています。全てにストレスがなく、そして適度に面白いという、この丁度いい塩梅が長く続いている要因かと。

各種操作のストレスの無さ、ほぼオートだけど組み合わせや育成にはやればやるほど考える余地がある感じ、SDキャラが可愛く動きなんとなく爽快感のあるバトル、スキップでサクサク進む周回。ゲーム性と手軽さを絶妙なバランスで両立していて、無理なく続けて何かをやってる感はある、みたいな。ゲームへの忍耐力を失った私も優しく甘やかされる感じ。気がついたら随分時間を持っていきますが。

日日日シナリオのストーリーも無難の皮を被って隠しきれないエッジがあって適度に面白く、気がついたら次の開放が楽しみ。キャラクターはお前これ好きにさせる気無いだろという尖り具合も、まあ、多々ありますが、なんだかんだで愛着は湧いてきました。いわゆるハーレム構造のゲームですが、それ自体に世界観の謎が仕込まれてそうなので、その辺りがどうなるかも楽しみ。でも私の推しはペコキャルです。主さまにはコッコロがいるからまあいいでしょ。

この間のサイゲフェスでも披露された「Absolute Secret」が最高のペコキャルソングなので、早く音源を売ってください。不憫な境遇に置かれた不器用なキャルが、やはり辛い境遇でも前向きなペコリーヌに救いの手を伸ばされて、あんたなんか眩しくて大嫌いって歌うんですけど、明確な拒絶の歌なんですけど、明らかに泣きながら助けてって言ってるのがね……。同じように不遇な立場にいてもね、ペコとキャルじゃ育ちと性根が違くて、だからこその関係がですね。本編大変なことになってるけど、幸せになってくれ。

あと手軽でストレスがないと言いますが、ガチでやるなら止まった人&取り逃した人から脱落する地獄のマラソンです。上位層は明らかに違うゲームをしている……。

 

3.少女☆歌劇 レヴュースタァライト

 去年からこれは危ない沼だと思っていたんですが、アニメ1話のアタシ再生産でおお!? となり、アニサマできらめきを浴びて、舞台#2でスタァライトされ、2ndライブでレヴュー曲でのアニメ再演を喰らって死にました。キャラクターをアニメと舞台の2層で展開して、どちらも同じ人が演じる、言ってみればそれだけのことが、コンテンツとしてはこんなにも強い。

あと、アニメも凄かった。細かいことはおいておいて、ひたすらに関係性と感情を純化して叩きつけてくる感じ。まひる回から始まり、ふたかお、じゅんなな、衝撃の真矢クロ、そしてかれひかまで、まさに概念という感じでした。約束タワーブリッジとかもう最高でしょ。

そしてアニメにも舞台#2にも貫かれた理念。一瞬のキラメキ、予想もつかない舞台、キリン(=観客)が喜びさえすれば、それが全てに優先して正しいという刹那的な快楽主義が、大変に好みです。俺が……俺たちがキリンだ……。

 

4.宇宙よりも遠い場所

 

まあもうとにかくとんでもなく出来が良いんですよ。そりゃあNYTもベストTV番組に挙げるわっていう。

女子高生たちが南極に行く物語といえばシンプルなんですが、そこには色々な側面があります。青春で友情で、ずっと抱えてきた過去だったり、意味を見いだせない日常だったり。良く出来すぎたキャラではなく生身っぽい、最初は何だこいつって思ってた子たちのことで、途中からはもう毎週号泣ですよ。

そして仲間と遠くへ行くという旅ものの側面! 途中で、ああこれはもうこの子たちはいつか別の道に進んでも、集まればこの時のことで何度でも盛り上がって、またふらっと旅に出て、その瞬間は女子高生に戻るやつだって思ったらもう負ける要素がなかった。そういう旅として13話での旅の終わりまで描き切られて、もう本当に素晴らしかったです。というか私の中でイメージが水曜どうでしょうになった。なんでだ。

それでいて、民間で南極を目指した大人たちにとっては譲れない、夢以上の何かに挑む話でもあって。報瀬にとってもそうですが、これは苦境にあってもなにくそと闘ってきたアウトサイダーたちの物語でもあって、だからこそ「ざまあみろ!」のカタルシスに繋がる訳で、そういった全てがたった12話の中で無理なく完璧に組み上げられている、本当に傑作だったと思います。

 

5.大橋彩香

今年もめっちゃ働いていたうちの推し。PROGRESSのスペシャルライブが本当に素晴らしかったです。明らかに広がった表現の幅、ドラムやダンスといった挑戦、そして変わらない本質としての笑顔と楽しさ。それを前のライブから一足飛びのレベルまで持ってくるストイックさに、大橋彩香というアーティストの可能性を見たライブ。アイマス、バンドリ、ウマ娘その他諸々と、なかなかソロ活動に取れる時間も無いのだとは思いますけど、本当に今後が楽しみ。

しかし、ふわっとしているようで自分がやると決めたことは絶対にやりきる人に見えるので、体にはくれぐれも気をつけてほしいなと思います。ナゴドで歌って踊って1週間もしないうちに国技館でドラム叩いてたのは驚きだった。

 

6.BanG Dream!

A DECLARATION OF ×××[Blu-ray付生産限定盤]

A DECLARATION OF ×××[Blu-ray付生産限定盤]

 

キャラの声を演じる声優が実際にバンド活動をするということの、意味と限界の両方を振り撒きながら、フルスロットルで駆け抜けた一年だったように思います。良いところも悪いところも全てを曝け出して加速するドライブ感が魅力だよなあと

しかし、5thライブのRoseliaは凄まじかった。遠藤ゆりかラストライブ、明坂聡美も大きなライブは実は最後だったステージで、キャラクターを纏いながらそれだけではない何かが立ち上るような、鬼気迫るパフォーマンスを見ました。

そしてアニサマのPoppin'Party。そんなの単独ライブでも見たこと無いよ!? っていうレベルで繰り出されたパフォーマンス、「God knows…」凄かったです。上手くなっているとは思っていたけれど、もう少し、あと少しでそれだけじゃない何かになれるんじゃないかと思ったステージでした。だからこそ単独ライブでも10曲ちょっとの曲数が限界っぽいのはもどかしく、しかし専業ではないし間違いなく頑張ってる訳で、うーん。

あと、曲としてはRAISE A SUILENがゴリゴリのデジロックで好きです。しかしバックバンドとして生まれて、独立して後からキャラがついてメインのコンテンツに並ぶというう流れのダイナミックさをこの規模で。ブシロードにしか出来ないし、やらないことだろうなあと思います。

 

7.ゾンビランドサガ

こんなもん見せられたら、「Cygames、お前が最高のコンテンツを作る会社だ……」ってなりますよね。

事前情報はホラーに見せかけて、出落ちのようなゾンビアイドルものが始まった時は何事かと持ったし、1話はメタルで2話はフリースタイルラップで???と思ってたんですが、ドライブイン鳥&ガタリンピックでこれ面白いぞってなって、6話7話で世代の違う死人たちががグループとしてアイドルをすることの意味を突きつけてきて、そこからは怒涛でした。リリィ回も最高だった。世代とジャンルをまたいでいく曲も最高。そして気がつけばゾンビとアイドルって最高の相性じゃね? って思ってる私がいます。

めちゃくちゃを勢いで押し切るように見せて、回収すべき謎と投げ出す謎の取捨選択の仕方が素晴らしいです。特に最後、幸太郎の物語としても初めから作り込まれていたことが分かるともうね。過去を一瞬のシーンで見せるだけで、彼のやってきたことと想いが鮮やかに立ち上がってくるところは本当に凄い。

そしてフランシュシュとして積み重ねたことが、仲間たちの想いが、さくらの一度は潰えた不遇の人生が、幸太郎の執念が、全てが一点に収束する最終回12話のライブシーンで泣きました。アルピノで、確かにフランシュシュは伝説になった。

ゾンビだからこそ突きつける生きているということの意味。死人は生きなきゃ生きられない。一度のステージに、瞬間に生き様を焼き付けて、時代に咲く徒花になるフランシュシュに魅せられた3ヶ月間でした。

 

8.ドラゴンクエスト

年始にインフルエンザで寝込んでやることがなくて始めたのですが、これが面白かった。ドラクエは7以来ですし、そもそもRPG自体やる気力もなくなって久しいのですが、隅々まで気が利いた作りと、圧倒的な「ドラクエ遊んでる感」の前にはそんな些細なことは吹き飛んでいきました。ストーリーも王道のようでいて予想外につぐ予想外の展開で、最後はああいう美しい収斂をするだなんて。

あとキャラクター含めちゃんと今の時代の作品になっている感じがして、流石だなあと。まあ、うん、普通にベロニカが好きだよね。キャラも物語上の役どころも美味しすぎました。最後にやりこみ要素で叶えられるお願いの中にベロニカを大人ver.にするが無いことだけが不満です!

 

その他

それ以外に印象的だったものを。

ライブ/イベント

2018年に何を言いたいかといえばKalafinaの(結果的な)単独ラストライブの武道館かなあと。流れてくる噂や、メンバーたちの10周年に向けた発言や昨年末の鬼気迫る様子をみてれば、まあ予想はできた。でも、出てきて歌いだして、ああこれは最後だと確信してしまった時の気持ちはなんとも言えなかったです。そんな中で、だからこその、MCを極力配した渾身のパフォーマンスに、10年積み重ねてたどり着いた高みと、燃え上がる最後の輝きを見た気がしたライブでした。掛け値なしに、Kalafinaが生まれてからこれまでで、最高のパフォーマンスでした。凄みがあった。釈然としないものはまだある、特に事務所に対しては。あるけれど、今はただ素晴らしい音楽をありがとうと。

他にも、やはり長く追いかけてると殴られた時のパワーが凄いなと思うライブが多かった印象。サンホラ曲で自分の中に執着があること自覚した1月のリンホラも、歴史を追いかけるごとに記憶がフラッシュバックした1月の岸田教団も、砂塵のイントロからのRevo登場に崩れ落ちた7月の梶浦ライブも。

あとは12月のZAQライブが本当に楽しくて、これだよこれって思いました。

 

音楽

アニソンはキャラクターソングが強かったなあと思う一年。アイマススタァライト、バンドリ、ヒプマイ、ゾンサガと追いかけてた中だけでも凄い量と質だったように思います。特にヒプノシスマイクは出る曲出る曲キラーチューンみたいな勢いで、声優がキャラクターとしてラップをするスタイルの可能性を見せつけた感じでした。どれも良いけど「IKEBUKURO WEST GAME PARK」が好き。あと、ゾンビランドサガのフランシュシュはゾンビが歌い上げるからこその「徒花ネクロマンシー」があまりに強い。
シンデレラ以外のアイマスシャニマスの放課後クライマックスガールズ「夢咲きAfter school」が最高のぶち上げ曲でした。「太陽キッス」も強いので放クラは隙がない。

アルバムでは岸田教団&The明星ロケッツの覚悟が感じられた「REBOOT」が、岸田教団にこんな洗練されたものというか、メジャーっぽさを感じる日が来るとはって思う一枚でした。それから、「ワンルームシュガーライフ」が最高だったので手にとったナナヲアカリの「フライングベスト」、コンプレックスを逆手に取って作り上げたようなキャラクターが完璧です。捨て身で切実で、でも道化っぽくて好き。あとはfhanaの「WORLD ATLUS」がとても良かったのと、相坂優歌「屋上の真ん中 で君の心は青く香るまま」が好みです。

それ以外だとLinked Horizon「楽園への進撃」が、進撃の巨人のストーリーの進行に合わせて以前とは違うテイストになっていて流石の仕事という感じ。あと、さユり「月と花束」がめっちゃ好きです。ああ、こういうの大好きっていう感じ。

 

アニメ/映画

上に挙げた以外でも面白い作品が多かったのは秋クール。「SSSS.GRIDMAN」の特撮を下敷きにした物語の構築の仕方が面白かったですが、この作品最大のトピックは上田麗奈のアカネの演技でしょう。いや本当に終盤は凄まじかった。ミァハ以来のとんでもない上田麗奈でした。うえしゃま天才。TRPG的な「ゴブリンスレイヤー」も、緩急のついた「DOUBLE DECKER!」も良かったですし、「やがて君になる」はおよそ完璧なアニメ化でした。アニメは中途半端に終わった形ですが、変なアニオリをしなかったということでもあるので、気になる方はマンガで続きを是非。

他のクールはあしたのジョーの再解釈みたいな「メガロボクス」、Studio 3Hzへの信頼が揺るぎなくなった「ガンゲイル・オンライン」、スポ根としても百合としても完璧だった「はるかなレシーブ」なども良かったです。あと、「BEATLESS」もアニメの出来はなんとも言い難いところもありつつ、話は今現在でも通用するというか、むしろ書かれた時よりもタイムリーになっていて凄いと思いました。

映画では「激情のワルキューレ」。テーマが発散してうーんという感じのあったマクロスΔが、ワルキューレを中心とした物語という軸を与えられるとこんなに面白くなるとは。

 

スポーツ

阪神タイガースはAクラスに居る時から、こんな試合してて上にいるのおかしいんじゃないの?? って感じだったんですが、実際に落ちてくると得も言われぬ哀しさがありますね……。ただいま最下位。懐かしい響き。伸び切らない若手に当たらない外人に高齢化する主力となかなか前途多難ですが、西とガルシア取ったんだから来年は期待させてくれ。藤浪は復活してくれ。

F1はなんというか、今年もフェラーリが十分以上に戦えるマシンを持っていたのにチームとベッテルのミスで自壊していって、メルセデス&ハミルトンが格の違いを見せつけたみたいなシーズン。何度俺たちのフェラーリ……って呟いたかわからない。
でもルクレールやガスリーという新世代が出てきて、トップチームに移籍する来年は楽しみです。ザウバーで悠々自適な老後を過ごすライコネンも楽しみ。
ホンダはマクラーレンと別れて、トロロッソと一緒に結果は出なかったものの立て直しには成功した感があるので、レッドブルと組む来年はなんとかなってほしい(願望)。でもレッドブルがホンダと分かれる前のマクラーレンみたいなルノーdis&ホンダ上げの発言を繰り返してるので、盛大なフラグなんじゃないかという一抹の不安が。

新日本プロレスは今年はケニーがIWGPヘビーをとったことが一番かなあと思います。ただその後のケニーは、理想とするものや海外進出への旗印なのは分かるけど、今目の前のファンが見たいものは提供できていない感じがあって、それに対しての棚橋の仕掛けたイデオロギー闘争という感じだったのかなと。でも試合をするとG☆Lは本当に抜群に面白いんだよなと年末のGLvs棚オスプを見て思いました。
あとはバレットクラブ分裂から、ジェイの台頭とオカダのベビー化、本体とCHAOSの共闘の流れで後半は来年へ怒涛の仕込みだった感じ。THE ELITEがAEW立ち上げで離脱するかもしれない中で、次への布石なのかなあと思いつつ激動を楽しんでしました。
でも、シリーズとしてはBOSJがとにかく抜群に面白かったです。今年はG1よりも凄かった。あの時のジュニアヘビーには確実に流れがあっただけに、怪我で離脱したヒロムが無事に帰ってくることを願っています。

3月のライオン 14 / 羽海野チカ

 

 羽海野チカのマンガは、感情の密度というか、濃度が凄いと、いつも読んで思います。この巻は、これまであった大変なことを経て、その先に確かにこの日々があるのだと感じさせてくれる、優しくて暖かい、そして楽しい話が主なのですが、それすらも圧を感じるというか。救われろ、報われろという、祈りというよりも狂信に近いなにか、みたいな。

中身的にはあかり周りの恋愛関係に至っていない三角と、零とひなのお話。とにかくみんな良い人で幸せになってくれという気持ちです。しかしこうすっかり子供っぽく描かれているなあと思っていたひなが作中でも小学生呼ばわりされていて笑っていたら、最後の話とかもうね。そして、ひなも零も、学校が楽しくて嬉しいだなんて、ちょっと前までの話を考えたら本当に、本当に。

あとハチクロのキャラたちが出てきて思わず叫びました。アマ将棋大会への参加で、ゴリラにすり潰される真山には笑いましたが、会話の中ですがはぐやあゆの元気な姿が見れてなんかもう胸いっぱいですね……。しかし対戦相手になった零の学校の先生たち個性を煮詰めたみたいな濃さで凄い。

閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム / 木元哉多

 

閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム (講談社タイガ)

 

相変わらず高いリーダビリティの短編でよくまとまった事件→死亡→推理→蘇りの流れと、揺るがない因果応報の概念と閻魔様の善悪観念で安心して読める完成度高い一冊でした。読者への挑戦嬢形式の謎解き企画をやっていたのも、過不足なく提示された要素から因果を結んで筋立てを整えるところに特化した推理ゲームとしての出来の良さがあってのものなのだなと思います。

今回は3編目のヤクザを足抜けしてうどん屋になった父親と娘が、かつて所属したヤクザの抗争に巻き込まれる話が面白かったです。組同士の抗争の中で、どうして身を引いたはずの自分が殺されたのかという謎は、いつもとはちょっと推理の要素が違ってきて面白い感じ。母を病気で早くに亡くして、元ヤクザの父親と二人三脚でやってきた娘の前向きさと健気さも泣けます。

そして2編目はまさかの沙羅の日常話。閻魔一家の中で、優秀だけどクソ生意気な年齢相応の娘をやっている沙羅の姿は、死者の前での超然とした存在感とはまた別物。わざわざこれを掘り下げてくるということは、この先審判者ではなく、沙羅自身が当事者となる事件もあるのかなと楽しみになりました。

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 / 城平京

 

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)

 

 コミックが先行した4編と書下ろし1編からなる短編集。まずは何より、鋼人七瀬から7年、続刊が出たということが嬉しくめでたいです。そして小説版は情報量が多いこともあって、一度マンガで読んだ話でもまた違ったところも見えてきて良かったです。そして書下ろしはまさしく「虚構推理」。やっぱりこの作品は面白い。

このシリーズのキモは、岩永琴子が探偵ではないということに尽きるのではないかと思います。彼女はあくまでも妖怪たちの「知恵の神」であり、それらの悩み事を解決するのが目的。情報源は妖怪が聞いたことから、凶器自体が付喪神、被害者の霊による証言なんていうこともあります。つまり、真実を解き明かす探偵とは目的も違えばルールも違う。謎解きにおいてはチートもいいところですが、それが妖怪の悩みを解決するとは限らないとも言えるわけです。

でも、その岩永琴子を中心に事件絡みの相談ごとをあの手この手で語るから、一風変わったミステリ的な何かが多彩なバリエーションででき上がる。人間の起こした事件を妖怪を無理やり納得させるために嘘の推理を作り上げることもあれば、逆に妖怪が絡んだ事件を人間に納得させるために真っ赤なウソの一大推理を構築することもある。怪異退治をしたかと思えば、自身が怪異のように恐れられることもある。本人は一切介在せずに、向こうの席で鰻を食べてるだけで謎解きパートが進展するなんてことすらあり得る。

何が嘘で何が真実か、そんなことはさしたる問題ではなく、人の法制度や倫理にも縛られない。ただ、琴子は妖怪たちの知恵の神として理をもって解を導く。嘘のような事実と、事実のような嘘が重なり合い、虚実が入り混じった中で、ただ理だけは貫かれている。それが大変に面白い作品だと思います。

しかし岩永琴子、マンガではビジュアルでずいぶん可愛げが補われているんだなって思いました。いやまあ好きだけど、好きだけどね!

境界のRINNE 40 / 高橋留美子

 

境界のRINNE 40 (少年サンデーコミックス)

境界のRINNE 40 (少年サンデーコミックス)

 

 前巻までにこれまでに出してきた各キャラクターたちの関係に決着を付けるようで実のところあんまり変わらず(れんげは変わりましたが)、最終巻でちょっと大きな話がメインの二人に起きるというとっても高橋留美子な展開の最終巻。

桜とりんねは、近づくこともなく離れることもなく、なんとなくの関係でずっと続いてきた訳で、それは真宮桜という子がりんねが何かやっても非常に淡々としているというか、いつも飄々としていたからだと思います。でも桜は感情が薄かったりする訳ではなく、そこが不思議な魅力でもあったのですが、そこのところの話を最後にこうやって持ってくるというのは面白いなと。

りんねにとって桜がそうやって冷静に処理してくれるというのはある種の甘えであり、けれど桜にも何があってもりんねからは好意を向けられ続けられるんだという甘えがあった。終わらないるーみっくわーるどの中でお互いに抱いていた前提をちょっとだけ見つめ直して、ほんの少し二人の関係が進むラストが良かったです。

あとは、40巻も続いて最後まで貧乏ネタを中心にしょうもない真相だったり雑な決着を、手を変え品を変え丁度よい塩梅で提供し続けてくれる、肩の力が入る隙のない職人技なマンガだったなあと。特別面白い訳ではないけれど、安定して読める、安心感のある作品でした。

そしてもう週間連載は大変なのかなあと思っていたら来年から連載復帰とのことで、マジかよ……と思いつつ楽しみにしていたいと思います。

少女☆歌劇 レヴュースタァライト 2ndスタァライブ”Starry Desert” 12/22 @ パシフィコ横浜

 

 ライブならまあ舞台とは違ってそんなに身構えないでも大丈夫と思って挑んだら、アニメレヴュー曲10曲連続、セリフ+殺陣あり、背景にアニメ映像という、舞台によるアニメの完全な再演をくらって大変なことになりました。ライブ後半でこれが始まってから終わるまでただ呆然としてた……。キャストが声優と舞台役者を兼ねてキャラクターを表現する2層展開式だからできる、まさにこの作品の真骨頂でした。

とにかくアニメ好きだったんですよ、スタァライト。ブルーレイ買うくらいには。で、そのアニメの一番美味しいところは間違いなくレヴューのバトルな訳で、それが演じているキャストによって目の前で具現化されていくこの感じ。編集されたアニメ映像と演技と歌と舞台演出が補完しあって、もう一度あのスタァライトが演じられていく感じ、本当に良いものを見せてもらったなと思います。アニメで知っているセリフも歌も、目の前で演じられるから更に突き刺さるんですよね、本当に。

レヴュー曲はどれも凄かったですけど、中でも「誇りと奢り」の天堂真矢はまさに別格でした。歌唱と立ち振舞に圧がある。ラストのサビでさらに一段階上がる気迫、そして鋭い動きで華恋の剣を弾き飛ばして、音に合わせたステップでセンターに立っての「ポジションゼロ! This is 天堂真矢」までの完璧さ、あまりに格好が良かった。ともすれば面白くなってしまうところに、圧倒的な格で説得力をもたせた富田麻帆の演技が凄すぎました。あとほぼ全曲出番のあった小山百代の頑張りとパフォーマンスも凄かったですし、三森すずこはやはり只者ではないと思わさせられる「RE CREATE」と「スタァライト」も凄かった……。それから約束タワーブリッジの演出もね、本当にね。

ライブの方も、ミュージカルをやっているキャストだけあって、歌って踊ってそして演技ができる。キャラクターとしてライブができるということが強みなんだなと感じて良かったです。見ていて安心して幸福な気分になれる、シンプルに完成度の高いよくできたショーだなと。曲的には演劇的な演出が入ってくる「劇場のゴースト」が大変良かった。そうだよな、私サンホラ好きなんだからそもそも嫌いな訳ないんだよなこういうの……って。

あと、ここまで特に誰推しというのがキャラにもキャストにも無かった九九組ですが、舞台、ライブと見てきて、私は岩田陽葵が割と好きだな? という気がしてきたので沼が危ない。(ブロマイドは買った)

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 6thLIVE MERRY-GO-ROUNDOME!!! 12/1・2 @ ナゴヤドーム

 

THE IDOLM@STER CINDERELLA MATER 恋が咲く季節

THE IDOLM@STER CINDERELLA MATER 恋が咲く季節

 

 メットライフの時の感想に、今回は5thツアーで作った骨組みに肉付けをしていくライブなんだなと思ったといった趣旨のことを書いたんですが、いやそれにしても作り込み過ぎじゃないですかね? っていう感じのナゴヤドーム。照明、演出、セトリ、個別衣装そして演者の細かいパフォーマンスまで、これでもかというくらいに盛り盛りで、とても1人の人間には全部を見きれないような情報量が襲ってくるライブでした。

あと、見ていて今〇〇担当の友人が死んだ、ああ念入りに殺された、これは不意打ち! ダメージがでかい!! みたいな感想が次から次へと浮かんでくる、これだけの人数が参加するライブにして、特定担当への破壊力も高かったです。というか、情報量が多すぎてみんな自分が見たいものしか見ていないから、あとで人の感想を聞いたりTwitterに流れてくるレポを読んだりして、初めてそんな事があったのか、そんなことをやっていたのかと気付くようなことが多かったです。そしてそういった細かい部分が逐一その担当の人に刺さるというのが、例えば最後のおねシンのところなんて30人近い演者たちのところで同時多発的に起きている訳で、それはなんというか、総体としての魅力と個としての魅力が同時に成立してて、そうだよこれがシンデレラガールズだと思うものでした。
ちなみに私は今回はメンバー的にメットライフの時みたく死ぬことはないと思っていたのですが、最後に全員での「always」という無差別全体攻撃が来たことによって死にました。たぶんナゴドにいたPは全員死んだ。なんだよあれ骨も残さないつもりか……。

あと、2日目に今回初めてアリーナ席だったのですが、やっぱりドームのスタンドが上まで満員になっている光景は感慨深いものがありました。そして、ここまで来ても、MCや挨拶が、常に次の景色、新しい景色を見に行こうと、まだこの先を見ていることが、本当に嬉しいことだなと思います。
だからこそ「またね」と歌う「Stage bye Stage」がアンコール前ラストに全体曲として配置されたことに意味を感じるし、自分の足で未開の地を歩けと「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」がデレステ周年曲として歌われた意味があったのだとも感じました。

この6thを終えて、ここまでのシンデレラガールズ、追いかけてきてよかったなと。これからのシンデレラガールズ、今まで以上に楽しみだなと正直に思うし、思わせてくれる良いライブでした。本当に楽しい4日間だった。

 

以下、曲ごとの感想です。長すぎるとあれなので絞ろうとしたけれど結局長い。

 

1日目

「Sunshine See May」
高田憂希の依田芳乃、5thの時は正直ちょっと無理があるんじゃないかと思っていたのです。それが今回、髪型を少し変えて、個別衣装(デレステ恒常SSR)を纏って出てきた瞬間から最後まで、依田芳乃がそこにいました。この一年で完全に役をものにしたというか、今回シンクロ率が高すぎて、ただただよしのんだった。
そして鈴木みのりの藤原肇も、雰囲気というか所作がワルキューレでフレイアをやっている人とは思えないほどしっとりと上品で、その2人が山紫水明としてセンターステージでこの曲を舞い歌えばそれはもうマイナスイオンですよ。ダイソンもびっくりするくらい空気が綺麗になる。そしてラスサビ前であのお互い顔を見合わせて「ねっ」ってやる振りの所で浄化されました。初日も良かったけど、アリーナからセンターステージを見上げた2日目は大自然の神々しさみたいなものがあって素晴らしかった。あと鈴木みのりは本当に歌が上手い。

「Naked Romance」
イントロで今回のソロはこっちかーと思ったら、ステージの奥側にへごがいて、これは、あれか、もしやアニメの忘れものか……ってなってもう駄目でした。卯月があんな感じになってた時、待っててくれたのは小日向美穂だったよね、っていう。そうか、そうかーって。

「命燃やして恋せよ乙女」
珠ちゃんの才色兼備、乙女! の口上で自分で言うかって笑っていましたが、あれカードのセリフなんですね。珠美どの、流石。

「祈りの花」
いやほんと前回から何があったのっていうくらいのパーフェクトよしのん。間のとり方、所作、声、依田芳乃でした。ああそうだこういうキャラクターなんだというのを、改めてこのライブの場で感じさせるような表現、素晴らしかったです。

「Last Kiss」
今回4日通じて、ソロ曲のベストアクトはこれなんじゃないかというくらい素晴らしかったです。SS3Aで、原田彩楓はあと数年して大人びたら、とんでもない三船美優を見せてくれるんじゃないかと思ったのですが、進化スピードがちょっと想像以上。
緊張感や初々しさがいい具合に抜けて、儚さと美しさと可愛らしさと色気の黄金率というか、消えてしまいそうなのに確かにそこに存在している感じ。そしてこの曲、この歌詞、この歌声。最後の方、光と影の照明演出の中で階段を降りてくる姿に思わず息を呑みました。
それから、デレステでも実装されたのですが、この曲の振り付けめちゃくちゃ好きです。2人という歌詞に合わせて指を2本出すところとか、背中側でハートを作るところとか最高です。いやほんといいものを見た。

「さよならアンドロメダ
光の演出が凄かった。ドームがプラネタリウムになって、私達は確かに一面の星空の下にいました。あと友人のりんののPが死んだ音がした。

「夕映えプレゼント」
このメンバーでこの曲で「夢みたいに綺麗で泣けちゃうな」はなんかちょっと良いですね。あと、茄子さん役の森下来奈さん、衣装も相まってあまりにも茄子さん。ラジオで聞いたときも、この人は演技がどうとか歌がどうとか以前に、オーディションをやったら本人が来たので選ばれたんだろうなとは思ったのですが、こうして見ると本当にただの茄子さんでした。それはMCで5万人? に拝まれる訳だ。

「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」
すごい、めっちゃ攻撃力の高いメンバーのガルフロだ……って。凛→アーニャ→奈緒とくるこの曲のセンターの流れは、やっぱりそうだよね! という感じがあります。

「AnemoneStar」
完全にトライアドプリムスへの布石が来てる……このブロックで仕留めますって感じだ……って。

「Love∞Destiny」
ついに揃ったMasque:Rade。長かった。この日を待ちわびたって感じなのですが、やはり加蓮が入ることで今までとは別物になりますね。これが完成品、本当のLove∞Destinyという感じがします。
今まで誰と歌ってもこれはまゆの曲という感じだったのが、Masque:Radeの曲という感じに。加蓮というピースが左に来ることで、右のまゆとのバランスが取れて、後ろの3人も活きてくる、別にそこまで見据えて人選した訳じゃないと思うのですが、流石ユニットだなと思いました。

「モーレツ★世直しギルティ!」
早苗さんソロ、ゆっこソロからのセクシーギルティ。全然統一感のない個別衣装なのですが、この衣装で3人並ぶと完全にユニットとして確立して独自色が出ます。このメンバーだから見せられる世界がしっかりしてるユニットはやっぱり強い。あとこの3人、本当にバランスが良い。そして何度聞いても歌詞が天才すぎて、天才が作った歌かよ……って思います。最高でした。

「毒茸伝説」
昔見た時は歌はうまいけれどまだメタルっぽい曲を頑張って歌ってる感じ、があったように思うんですね。なんか今回見たら凄い自然になってたので驚きました。この曲も、星輝子も完全にさっつんがモノにしてるなというか。そしてそれはつまりめっちゃカッコいいということでもあります。ダンサー引き連れて花道歩いていくのヤバかった。

「Trust me」
ここでこの曲というゴリゴリの流れがきて、本当に楽曲のジャンル幅広いなと。惜しむらくは頭振りたくなる曲なのでステージを何も見ていない。

「∀NSWER」
この流れからのこれはもう爆上がりですよ、みたいな。バックステージから、3人がトロッコに1人ずつ左右へ展開、そして真ん中の花道を朝井さんが歩いてセンターへ向かっていくというこのフォーメーションの時点でもう負ける気がしない。3人が横で繋がりながら、けれど別々にメインステージへ向かってくる感じ、最高にインディヴィジュアルズでした。あと、1日目に花道を歩きながら指を突き上げる朝井さんやばいと聞いて2日目に注視してたんですが、あの背中はカッコ良すぎてやばい。

「Trinity Field」
流石にセンターステージに三角形パネルは用意できないわなと思ってたら、ライトの演出で三角形が開いていくのをやっていてああああああってなりました。あと上からのカメラで照明が三角形になって頂点に3人が立ってるのもやばい。本当に今回の照明は神がかっていると思います。
そしてトライアドプリムスはやっぱり主役の器というか、格が違うんだなという感じがするんですよね。単純にパフォーマンスの良し悪しとかではなくて、存在感というか、3人がブレずに引かずに進んでいった結果、その位置にいるみたいな。この難しい曲を歌声の力で全部ねじ伏せようとするような渾身のパフォーマンス、痺れました。

 

あと久しぶりのCMの発表があって、そこに白菊ほたるの姿を認識した瞬間に「ほたる!!」って4回くらい叫んでました。たぶん今回の4公演を通して一番叫んだ。
ほたるはね、物語があるんですよ。度重なる不運で何度も酷い目にあっても、折れそうになっても、たとえ周りを巻き込むことになっても、君が夢を諦めなかった情念が、その執念が生んだ結果だ! って言ってあげたくる物語が。
そして声付き、ソロ曲、さらに翌日にはしんげき出演も決まってスピード感についていけない。

 

2日目

「追い風Running」
しまゆきさん、へそ出し衣装が似合っていてめっちゃ細くて、うわあアイドルだ……ってなりました。そしてこの曲をキレキレで踊ってて、ふたたびアイドルだ……って。

「楽園」
こういう言い方はあれなんですが、もともとアイマスが好きだった人は、自分の演じるキャラクターのPが何を望んでいるか、どうすれば死ぬか、よくわかっているんだろうなあって。

「きらりんロボのテーマ」
1日目の圧殺するようなセトリで、もう出し尽くしたでしょみたいな気分でいたんですが、ここからのバラエティゾーンでそうだよこの引き出しまだ開けてなかったよって膝を打ちました。というかこの茶番感とバラエティ感、シンデレラガールズってこういうのだったよ! みたいな。

「あんずのうた」
杏と乃々(前回DJぴにゃで歌った)によるあんずのうた。全力で叫ぶコール。そうだよシンデレラってこういうのだったよ。

「おんなの道は星の道」
そうだよシンデレラて……シンデレラってなんだ?? みたいな演歌。この落差。SS3Aもすごかったですが、今回の個別衣装だと更に映えますね。こぶしの効いた歌、堂々たる立ち姿、お嬢、めっちゃかっこよかったです。

「Treasure☆」
まさかのセクシーギルティ&あんきらによるTreasure。2組とも抜群にキャラが立っていてこういうバラエティ仕事をさせたら抜群だっていうことを実証するようなパフォーマンスでした。早苗さんが客席に銃口を向けまくっていてちょっと面白い。

「ラブレター」~「はにかみdays」
ちょっと話がずれるんですけど、私はデレマスにハマった時点では大橋彩香島村卯月も推してないんですよね。別コンテンツ(てさぐれ)でへごに落ちて、それでデレアニで大橋彩香演じる島村卯月に落ちたみたいな経緯で。
で、何が刺さったかというと、デレアニって島村卯月の心の壁を巡る物語だったと思うのです。それが、大橋彩香自身の当時抱えていた物語に凄くシンクロしていて、そこがあまりにもクリティカルだった。
なので、島村卯月=大橋彩香の物語としては、私の中では、3rdライブ終盤の流れ、そして4th神戸でSnow Wingsをソロで歌い始めて、サプライズでNGsが揃って、その後のMCで泣いてたところで一段落してたんです。ああ、こういう時に、誰かを頼って泣けるようになったんだな、もう大丈夫なんだなって。だから台湾のS(mile)ing! は、もう遠くで立派にやってるなという感想だった訳で。
なので、卯月に関しては出演してたら嬉しいけど、そこまでのことはもう無いし、安心して楽しめるって思ってたんですよ、この辺りまではっていう話。「Naked Romance」でだいぶヤバかったけど、この日はSnow Wingsオリメン聞けてよかったし、やっぱりPCSは可愛いし、はにかみも安定してるなーって思ってた、まだ。

「この空の下」
アニメの頃にはまだ声のついていなかった3人が、こうやってこの曲を歌うということにちょっとぐっと来ました。

「With Love」
よしのんが「法螺貝が上手く吹けないときも」って言って思わず笑ってしまいましたが、やっぱり良い曲だなあと思います。センター響子でこの曲は強い。

「Nation Blue」
サイバーグラス。この2人で歌うでしょとは思っていたけれど、実際に歌って、この曲だとやっぱり感慨深いものはありますし、友人の比奈Pと上条Pは死んだ。
ロッコ曲だったのですが、車輪のところの電飾が車輪の部分だけになっていて、あれ眼鏡だったと思うんですよね。闇に浮き上がる眼鏡と、その上で歌うサイバーグラス。いい景色でした。

「流れ星キセキ」
メラドが2日目にLiPPSの次の曲を持ってきたのだから、今回もTPの次になにか来るだろうとは思っていて、でもあの「Trinity Field」の後にいったい何を? とも思っていました。三角形にもう一つ三角を重ねて星になるなんてそんな演出でくるなんて、そんな、ねえ。
ニュージェネレーションズ、やっぱりシンデレラガールズの軸であるんだなという貫禄の、そう貫禄のパフォーマンスでした。「流れ星キセキ」、正直アブナイを歌った後でまた歌うのかなというのは思っていたんですが、今回は完全にあの頃から未来にいるNGsだったし、それでもNGsの象徴はこの曲なんだと納得させてくれるパフォーマンスだったと思います。

「always」
で、これですね。センターステージでNGsがそのまま歌いだしたんですよ。それはつまりへごが歌いだしたということで、なんかもうその瞬間駄目でしたね、崩れ落ちるやつだった。
今回のMC、パフォーマンス含めて、大橋彩香はずっと大橋彩香だったんです。自然体で、センターだという気負いがないのはいつもだけれど、いつも以上に普通にしてた感じがあって。でも、島村卯月だったんですよ。MCのあの雑な相槌とか流し方は確かに卯月でもあって、でもへごだった。「最後の曲です」への客席からの「えー」の声をぶった切るところなんて、もうわからなかった。
最初からそのシンクロ感に落ちたというのはさっき書いたとおりですが、今回はなんというか一線をかくすというか、演じていることは演じているけれど、なんかもう区別する必要ないじゃん? へごは卯月だし、卯月はへごだよ? みたいなね。そういう感覚。言葉にしづらいんですけど、あまりにも当たり前に別の存在なんだけど同一だった、というか。
それで、その状態でこの曲をね、へごがね、歌いだしたんですよね。
なんというか上がりだと思ってたし、私は島村卯月大橋彩香に関してはもう大丈夫だと思っていたけど、ぜんぜん大丈夫じゃねえって、その瞬間にね。全員で歌うalwaysでそれ自体が凄く特別なことだというのもわかっていたけど、私はずっとへごを見ながら呆然としてたような気がします。
1週間経ってまだ消化できていないのですが、これは決して終わったものではなく、あの時の感覚にはこれから向き合っていかないといけないんだなと、そう思った一曲でした。