きみとぼくの壊れた世界 / 西尾維新

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

興味深い、面白い。しかし、受け付け難い、気持ち悪い。なんだろう、この感覚は。内容に関してはあまりよくわからなかったというところが本音ですが、少し思うところなんかを書いてみます。ややネタばれするかもしれません。あしからず。
本筋はミステリと学園物なんだと思います。確かにその通り。でも、この本は少なからず、おかしいです。文字通り壊れてます。端から端まで。もはや嫌悪感を抱かせるほどに。題名からしてセカイ系な雰囲気を漂わせていますが、あんましセカイ系的な感じではありません。確かに、認識範囲をセカイのすべてだとするようなくだりも出てきますが、そこが主点では無いような気がしますし。むしろセカイ系的な構造すらも、パズルのピースに過ぎない感じです。序盤のよくわからん薀蓄も、メタミステリな話も、狙ったようなキャラクターも、設定も、言葉遊びのような文章も、すべてピース。しかも、集めても絵になら無いパズルのピース。本筋に必要な部分がどれだけあるかといったらそれほどないような気もするし、これが全部なければこの小説にはならないような気もする。そんな破片。そういうイミで、ピースメーカーなのは読者のほうかもしれません。まぁ、とにかく一筋縄ではいかない、作品、というか筆者のひねくれ具合が感じられます。
ミステリのほうはこれと言ってどうだということもなく。とにかく何で死んでるのかよくわからない辺りが。そして序盤で推理小説は簡単に人が死ぬみたいな事を言いつつ、まるでどうってことの無いイベントの一つのように人を殺し、それ自体はほとんど問題にしないのはどうなのかな。しかしこの全般として思わせぶりな話を深く考えるだけ無駄なような気もするし、もしかしたらホントに深い意味があるのかもしれないし。どうしたものか。
ところで、この小説、頭の50ページくらい読んだところでは、破り捨ててやろうかと思いました。とにかく薀蓄めいた言い回しが頭にくる。お兄ちゃん大好き妹キャラ、夜月がにゅだのにゃーだのいうのも頭にくる。そして、一番問題なのは主人公である様刻が生理的に受け付けられないような思考パターンをすることです。まるで、ノベルゲームでもするかのごとく、問題を考えて一番正しい選択肢を選ぶ(選択肢まで本文に書いてあったりする)という行動も、まるで自分はすべて正しくて、すべてに増してえらいかのような態度も、虫唾が走る気がしました。そしてあのラストはどうなのか。まぁ、その生き方を本人で気持ち悪いと言ってるだけいいのですが。少なくともこの主人公には感情移入はできそうにありません。しかしながら、もう一人の主役であろう病院坂黒猫のほうに感情移入の余地が十分に用意されてる辺りが、単純な文章の面白さと共にこれを一気に読ませた要因なのかもしれません。彼女の社会不適合者としての、世界から断絶されるのが怖いという思いは心当たりにあるものですし、その感覚から派生するあらゆる理解を超えたものへの恐怖感もわかりますし。
まぁなんにしろよくわからないというのが本音ですが、世界も登場人物も飛び切りに奇妙なこの小説は、衝撃的ではあったなぁと。現時代的感覚をよく拾ってる気がしますし。所々ピンと来るところはあります。読んでて面白いです。でもしかし振り返ってみるとなんだかなぁ。
一番気になったのはカバーの折り返しにある筆者のコメント。
「人生は罰ゲームなんです。心当たりが無いんですか?」
のところ。少なくともこの感覚は確かに理解できる気がします。