フリッカー式 / 佐藤友哉

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)

やばい。やばい! やばい! やばい!
ミステリーになってなくたって、登場人物が意味不明だって、設定が突飛だって、展開がありえなくたって、サブカルデータベースが鬱陶しくたって、報われなくたって、救われなくたって、そんなのどうでもいいじゃないか! 佐藤友哉は最高だ!
とまぁ、取り乱してもしょうがないのですが、そのくらい性に合う小説でした。客観的に見たら、あまりにも滅茶苦茶な話なのですが。というかトンデモ話。とにかく狂って壊れてイカレた話です。登場人物の大半は自己中心的で、主人公にいたっては行動原理すらわからない。話筋はとんでもない軌道を描いて、さらにとんでもない結末に着地して、とんでもない真相が明らかになって、まさにやってられるかって感じです。
ですが、不思議と嫌な感じを受けなかったのも事実。むしろ、波長が合う感じ。あぁ、そんな感じと思えるような。かろうじてつなぎとめてる日常の先に渦巻いている、妄想や思考や思想の類をそのまま小説に仕立て上げたみたいです。捻くれて歪んで全てを嘲笑うような思考が、ちょっとした表現や、ちょっとした登場人物の行動や、話筋から浮き出しまくっています。なんというか、若い。その辺が合わない人は読んでてムカムカするかもしれません。割とこざっぱりした文章はそこかしこの表現ですんなり心を捕らえるから不思議。クリスマス・テロルは話自体があんまり面白いとはいえなかったけど、これは面白いです。
きっと熱狂する人と毛嫌いする人に分かれるんじゃないかと思う小説なんですが、私は前者だったと。とにかく波長が合ってしまったとしか言い様がなく。
満足度:A+