阿修羅ガール / 舞城王太郎

阿修羅ガール (新潮文庫)

阿修羅ガール (新潮文庫)

三島由紀夫賞受賞作。
文章を追いかけてそれだけを理解しようとしたら、こんな滅茶苦茶なものはないと思うのですが、読み終わったら言葉じゃない何かすごいものを得たというこの感覚。いや、舞城はすごい。こんなもの普通は書けないです。
という訳で、言葉でどうのっていう感じじゃないです。言葉だけを追いかけたら意味が分かりません。とりあえず最初は女子高生の恋愛モノなんだなぁと思ってたら、冒頭からHしてた相手の男子高校生が殺されてミステリ化するかと思ったら、2ちゃんねるみたいなネット掲示板が発端となって調布でアルマゲドンが発生します。連続殺人鬼グルグル魔人もでてきます。キッチン=厨房狩りとか起こってます。掲示板の書き込みが4ページにわたって書いてあったり。そしてアルマゲドンが進行して金槌持ったクラスメイトが家に来て一章終了。二章に入ったらグッチ雄三とモト冬樹が出てきたり、砂漠に出たり、崖に文字が書いてあったりして、次に童話が始まって、死ね死ね死ね死ねって感じで、グルグル魔人はうんこぱーん。そして二章が終了。もうものすごい。この人の頭の中はどうなってるのだといった感じ。
でも三章まで読み終わると、何かこうすごい良いものを読んだ気になります。全てがとはいかないまでも、多くのものがすっと落ちるところに落ちて、今までの全力疾走の先の新しい世界が見えたような気がして。このひとの基本はきっと愛と全肯定なのかな。とにかく愛!慈悲の心!世界の肯定!自分の肯定!みたいなモノが渦をまいてやってくるこの感じ。結局ごちゃごちゃしてわけ分からない物語の中で、何か確かなものが見つかったような感覚。やっぱりすごい。
2章は結局、夢や臨死体験みたいなもので、アイコのイメージの洪水をそのまま小説に仕立てたものなのかと思います。一人称文章は女性一人称になったことでだいぶ読みやすく、勢いもあって良かったです。あと、サブカルの引用が大量に出てくるのを見て、やっぱりこの人はファウスト系の人なんだなと思ったり。なんにしろ舞城王太郎で、はじめて素直に面白かった作品です。好き好き大好き〜もよんでみたいな。
満足度:A