翼のある闇 メルカトル鮎最後の事件 / 麻耶雄嵩

翼ある闇―メルカトル鮎最後の事件 (講談社ノベルス)

翼ある闇―メルカトル鮎最後の事件 (講談社ノベルス)

読み終えてしばし唖然。ウソツキ!
とりあえず私はミステリをあんまし読んでるわけじゃないというのが大前提で。
終わってみればなんとまぁバカバカしい話なんだと思うのですが、そこがまた一部を読んでるときの感覚と全然違ってなんとも。一部ではいかにもな探偵の元に依頼状と脅迫状が届き、いかにもなワトソン役と共に向かった先はいかにもな古城で、そこにはいかにもな一族が住んでおり、いかにもな首切り殺人が起こり、いかにもな密室や見立てがあって、いかにもな警部がいて、いかにもに連続殺人事件になって、いかにもな感じで探偵が解決編を始めたのですよ。クラシックや美術品、キリスト教関係の薀蓄も、まぁいかにもな感じだし。それがまぁ、そこで終わらないのが捻くれてるというかなんというか。
メルカトル登場以後は真実が二転三転するたびに今まで築いてきたものが崩れて振り出しに戻っていきます。しかも崩れる説に説得力があるから困り者。そして明らかになっていく真実はもうなんというかぶっとんでるし。結局きっちり推理が決まって終わると思ったら、最後にあーなるんですから。真実を巡ってるうちに、なんだかミステリでいいように遊ばれてるような気もしてきます。そして構築されたそれっぽい推理の崩れ去った時のなんともいえない徒労感と虚脱感。
神だのなんだのがやたら出てくるのは、誰が誰を操って、誰の行動が誰の推理内でとかいうのを繰り返してくとやっぱりでてくるのでしょうか。あと双子とか霧絵とか夕月とかそのあたりの女性キャラクターの記号性って、10年やそこらじゃ変わらないんですね。記号的に書いてるような感じはするんですが。白痴入った双子の女の子がパステルピンクのフリルのエプロンドレスで出て来てステレオで喋るって、双恋も発想はそれほど変わりません。
文章はちょっと読みにくかったです。特に前半。まぁ、なんというかもう一冊読んでみようかなぁといった感じ。新本格読むならもっとスタンダードなところからの方が良かったのかな、とも思いましたが、私の好みから行くとこれ読んで正解かも。
満足度:B-