青い花 1巻 / 志村貴子

青い花 1巻 (F×COMICS)

青い花 1巻 (F×COMICS)

素敵な工芸品の小物を眺めているような幸せな気分になれます。まさに珠玉。
水彩画のような表紙絵から既に素敵な感じ満載の物語は、鎌倉の二つの女子高を舞台に繰り広げられるガール・ミーツ・ガール。要するに百合モノ。しかしこのベタベタしない素晴らしく素敵な感じはなんなのでしょうか。人間関係は久しぶりに会った幼なじみのあきらとふみ、ふみの先輩の杉本などを中心に結構ごちゃついているのですが、それでもドロドロした雰囲気なんて微塵もみせないさらりとした感じです。
先輩やらふみやら、やたらと女の子を好きな女の子が多いことは、こういう乙女の園な女子高では普通なのか私にはわからないのですが、ちょっと違和感。ただ、なにかこうファンタジーとしてリアリティがあるので、そこら辺の違和感は割とどうでもいい気がします。展開が少し早い気もしますがそこもまぁ許容範囲。繊細で微妙な心理描写が、友情よりは強くて、愛情というにはちょっと足りない「好き」という感情をよく描けていて良い感じです。ちょっとした行動や表情、セリフからいろいろなものが伝わってきます。キャラクターも魅力的。あーちゃんはいい子です。
あと、志村貴子という人は本当にマンガが上手だと思います。こんなに言葉数は少ないのに、間の取り方やちょっとしたセリフやモノローグ、キャラクターの表情でここまでいろいろなものを伝えて、そして他にはない空気を作り上げてしまうのはすごいです。鎌倉という土地の魅力。雰囲気の魅力。完璧。本当にこの素敵空間はなんなのでしょう。
満足度:A+