SHI-NO 黒き魂の少女 / 上月雨音

SHINO ―シノ― 黒き魂の少女 (富士見ミステリー文庫)

女の子がランドセル背負ったイラストが表紙で、帯に「クールな小学生シノちゃんと大学生のぼくとの純愛系ミステリー」ってそんな犯罪の匂いがするような謳い文句書かれても……。しかも内容とかなりズレがある辺り編集部は何を考えてるんでしょうか。僕とシノちゃんは保護者と被保護者の関係なのでそこら辺を期待した人は悪しからず。
内容は異端者や異常者、人間が生きることと死ぬことなどのテーマが全面に取り上げられていて、ちょっとファウスト系や講談社ノベルスに通じるものがあります。そういった猟奇的な事件や狂気的なものに惹き寄せられるシノちゃんと、どうにか普通に過ごして欲しいと願う大学生の僕の話です。シノちゃんの小学生tらしからぬ常識や倫理を飛び越えた死生観に関する冷めた目線がなかなか魅力的。それを引きとめようとする僕のほうの思考も良く分かるので、この二人のコンビはなかなか良い感じだと思います。
ただ、全体的に出来がいいとは言い難いかなという面も。文章も展開も説明不足だったり突っ込みどころがあったりして、ちょっと微妙。パソコンも携帯も持ってないのにネットには詳しいとか、一体いつから待ち伏せてたんだとか。あと、ミステリーというよりはサスペンスかなぁと思いました。ただ、それを置いておいても、なかなか面白い所のある話でした。もう2、3冊出て洗練されてくるとかなり面白くなるような気がします。
個人的には本筋に当たる話より、間に挟まれる吸血という短編が好み。猟奇的な事件の描写は私がそういうのに弱いというのもありますが、なかなかぞっとするものがありますし、それに対した時のシノちゃんの異端性が浮き彫りになっていてなかなか良かったです。
満足度：B+