ぼくのメジャースプーン / 辻村深月

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

学校のウサギがばらばらにされて殺されるという事件。好奇心からそれを行なったかのような犯人。そして壊されたのはウサギの命と、大切なあの子の心。言葉で相手を縛り罰を与えることができる不思議な力を持った小学4年生のぼくが、犯人の罪のあり方と、罰のあり方を計るために考え抜く戦いの記録です。
あまりにも直球に生命の死や友人の受けた傷、その罪の重さと罰のあり方を問う小説です。答えの出ない問題に対して、それを裁く力を持った少年が、同じ力を持った大人である先生との会話から立ち向かっていく様子はちょっとキツイものがあります。人のために復讐することの意味、罰というもののあり方。先生の割り切った考え方も、ぼくの揺れる心も、理解できない訳じゃないけど、どれが正しいのかが段々とわからなくなっていく眩暈のするような感覚。著者が教育学部卒という事で、こういった問題に触れる機会も多かったのでしょうか。
そして、ぼくの最後に選び取った選択肢とそれがもたらした結果。これは本当に苦しいです。身勝手ともそれしかないとも言える辺りがもう。それでも最後に見えたハッピーエンドの予感に希望を感じさせてくれたのは良かったなと思います。
構成としては、ちょっと能力に関する解説が冗長かと思いました。何箇所かある仕掛けはうまく機能してると思いますが、それほど凝ったものではありません。ただ、罪と罰というシリアスな問題に真っ向から踏み込む以上、こういう仕掛けはこのくらいでよかったかと思います。
満足度:B+

オマケでちょっと気に入ったセリフの引用。

「責任を感じるから、自分のためにその人間が必要だから、その人が悲しいことが嫌だから。そうやって、『自分のため』の気持ちで結びつき、相手に執着する。その気持ちを、人はそれでも愛と呼ぶんです」