- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/07
- メディア: 文庫
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高校3年最後のイベント、一日歩き続けるという歩行祭を舞台に、自分と向き合ったり、相手と向き合ったり、もつれた人間関係を少しずつほどいていったり、そういう感じの物語。
とにかく、高校生達が自然で、変に悟ったていりしないし、頭でっかちでもなく、それでいてひたすら歩き続けるという時間の中で自分のことを考え、相手のことを考え、簡単な言葉でも気持ちを整理していく様はすごく良かったと思います。思考の流れや人間関係のあり方が、高校生ってこんな感じだよなと思わせてくれます。メインのキャラクター達も、重い話になっても本人達がしっかりとした歩みで前に進んでいく強さを持っているし、だからといって完璧な人間でも無いというのはやっぱり印象が良いです。ただ、惜しむらくは私がこんな青春を経験していないということか。こんなキラキラした青春は知らない。それゆえノスタルジーには浸りにくいのに、確かにこれは確かに高校生だと思う、すぐ隣にはこんな世界があったはずだという心情もあって、なんだか読んでいて複雑な気分になってしまう小説でもありました。
少しずつ動いていく関係や感情の描写は上手だと思うし、所々ハッとさせられるような文やセリフがあるし、まるで自分も歩行祭に参加しているような気分になれる所も良かったです。ただ、なんというか、これを読んで青春だなぁと感傷に浸るような資格が私には無かったということで。
満足度:B-