人類は衰退しました / 田中ロミオ

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

「CROSS†CHANNEL」に「家族計画」、「加奈〜いもうと〜」と言われれば、その辺りのゲームはやらない私でも名前くらい知っている有名シナリオライター田中ロミオの初小説がガガガ文庫から。
話としてはほのぼのファンタジーなのでしょうけど、何かがどこかでズレていて、そのズレっぷりが最高です。舞台は文字通り人類が衰退し、身長は10センチほど、高い知能と技術を持ち、無邪気で失禁癖のある妖精さんたちに人類の座を譲っている未来。主人公は新米の調停官で、妖精さんと交流を図ろうと奮闘しますが、何故か自体は不思議な方向へ。
･･････と説明するとなんだかほのぼのとしそうで、実際ほのぼのとはしているのですが、なんというか、その、どこかすっとぼけているというか、もっと言えばシュールな小説です。この雰囲気は読んでもらわないと伝えにくいのですが、個人的には抜群のセンスだと思います。
楽そうだから調停官の仕事を選んだ主人公の少女の、やや無気力でちょっと黒い性格には共感の余地大ですし、その主人公と祖父の掛け合いの面白さったら。そして少女と不思議な思考と喋り方をするさん妖精さんの会話も妙な味わいがあります。素敵。
話は短編２話からなっていて、妖精さんと少女のどこかおかしな交流がメイン。見かけほのぼのしているようで、よく読むと微妙に黒さが透けて見える辺りがツボ。そして設定自体はやろうと思えばシリアスにSFできそうな感じなのですが、この辺りには深く突っ込まないのか。なんにしても、表面のほのぼのさの裏に何か別のものが控えていそうな違和感が付きまとうのは、私の考えすぎなのでしょうか。
文章とキャラのセンスは素晴らしいですし、設定やストーリーもソツなく面白かったので、続編にも期待。まだまだ続けられそうな感じですし、もっとこの不可思議で可愛い妖精さんの話を読みたいところです。
満足度：A