しおんの王 7巻 / かとりまさる・安藤慈朗

しおんの王(7) (アフタヌーンKC)

しおんの王(7) (アフタヌーンKC)

トーナメントはいよいよ佳境に、そして事件の謎も少しづつ明らかに。
悟vsしおんの対局を通じて明かされていく8年前の事件。過去にとらわれる悟と、今を見つめるしおん。盤上でぶつかる想いの激しさと、その中で見せたしおんの強さが印象的。最後のインタビューのシーンでのしおんには凄味がありました。それだけに、羽仁名人が強くなるには全てを捨てろと言うように、全てを切り捨ててどこかへ行ってしまうのではないかというような怖さも感じます。しおんの場合にはそれは無いと、読者としては信じたいですが。
そして、事件のこともあり揺らぐしおんを支えたのは歩の存在。ただ、羽仁名人の弟子になったことで、こちらもこちらで大変な道を歩み出したような感じ。盤上での試合はあと一局と言うところまで来ましたが、その外側を取り巻く人たちの人間模様にはまだ一波乱も二波乱もありそうです。
事件がらみでは、今だ見えない名人の思惑が怖いです。歩を使ってしおんにもちょっかいをかけ、悟にも手を回し、駒のように周りを動かして一体何をしようとしているのか。そしてそこまで強さにこだわる理由はどこにあるのか。事件について、彼自身について、一体何が決勝の対局で見えてくるのか気になるところです。
しかし、作中じゃ女流棋士斉藤歩は死んだとまで言っているのに、表紙に歩を持ってくるのは作品的にちょっとどうなのかなという気が……。