僕は友達が少ない / 平坂読

僕は友達が少ない (MF文庫J)

僕は友達が少ない (MF文庫J)

凄く凄く残念なのに、この残念さには確かに覚えがある……!
平坂読みの最新作は、「ラノベ部」に続いて掌編の積み重ねによるゆるゆる部活系コメディ。高校生たちが部活を作って、ゲームしたり駄弁ったり劇をしてみたりプールに遊びに行ったりと部活動を満喫……しているのか微妙なのがこの作品。多分「ラノベ部」とこれを足して二で割って、ラノベ的ファンタジー要素を抜き取ると「とてもリアリティのある何か」が生まれます。それが読みたいかはまた別の話ではありますが。
主人公が出会った少女夜空は黒髪ロングで容姿端麗なのに口を開けば罵詈雑言、当然友達はおらず放課後の教室で「エア友達」と楽しげに歓談しているという残念っぷり。そして主人公の少年小鷹も、中途半端に金髪だけ遺伝したせいでヤンキー疑惑がかかって、おまけにコミュニケーション不得手なためノーフレ絶好調という残念な子。そしてそんな2人の立ち上げた「隣人部」の活動内容は「友達作り」。コペルニクスもびっくりな発想大転換なのですが、部内の人間関係はすっぽり友達の範囲から抜けている辺り、その発想はなんか知ってる! な気分になって二重に残念という。
そんな隣人部に集まる面々も、金髪美少女で完璧超人なお嬢様だけど世界の中心は自分思考で高飛車すぎる性格が災いし、跪く男たちは居れど絶賛ノーフレな星奈に天然が加速し過ぎて残念な女の子にしか見えない男の子幸村とか、ダメだこいつら早く何とかしてあげて! というような状況。
さらにプロローグと口絵でしかまだ出ていない他のキャラも別の意味で期待できそうですし、小鷹の妹はゴスロリに身を包み絶賛邪気眼中のリアル中学生。もう本当にどうしたらいいんだこれは、という惨状ではあるのですが、残念なことにこの残念な人たちの残念な行動の残念なノリが、とても良く分かるしとても面白いのです残念だなぁもう。
作者らしい極端なキャラクターやわざとらしさとやりすぎ感が漂うところは露悪的に感じてちょっと苦手なのですが、それでもセンスが分かるだけに面白く読めました。モンハンやっていがみ合う2人とか、部室でギャルゲやって感情移入し過ぎて大騒ぎの2人とか、ドS夜空の口撃に肉呼ばわりされる星奈とか……。それにしたって「汚れちまった悲しみに」はあまりにひどすぎると思いますが!
そんな隣人部も何かそこはかとなくラブの香りがしたりと今後面白いことになりそう。なんだかんだでみんな部室に集まってくる辺り、結局楽しく部活動してるんじゃないかと思います。
そしてこれだけは言いたい。お前らノーフレじゃないよ! それ十分友達だよ気付けよ!