やはり俺の青春ラブコメは間違っている。 / 渡航

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

とりあえず、友達のいない高校生が美少女と一緒に部活動を始める残念系コメディというあらすじで、帯に平坂読をもってくるその根性が素晴らしいと思います。
そんな訳でどうしても「僕は友達が少ない」と比べたくなる作品なのですが、中身の方向性はちょっと違う感じ。残念な人たちが残念な感じで色々するのは同じなのですが、この作品は残念な人たち以外のクラスメイトの存在が大きく描かれているので、クラス内でのぼっちっぷりやグループ関の微妙な関係が作品内で大きな意味を持ってきます。
主人公の八幡は絵に描いたように見事なひねくれ具合を発揮する高二病少年。何でもかんでも斜めから見て理屈をこねる様は、一周して微笑ましくなってくるほどのこじらせっぷり。そしてそんな彼が生徒指導の先生に連れてこられたのは、お悩み相談的部活動の奉仕部。ねじまがった根性をたたき直すためにこの部活に入れられた八幡は、そこで完璧美少女の雪乃に出会うわけですが、この子もまたなんというか残念。なんでも人よりうまくできて、しかも超がつくほどの美少女ということで周囲のやっかみを受け続けて育った結果、容赦ないド直球の言葉でバッサリ人を切り捨てる上に過剰に負けず嫌いという近寄り難いぼっち娘に。
そしてこの物語は、簡単に言えばそんな二人が、奉仕部として張り合いながら活動していく中で、ぶつかったり罵詈雑言の雨が降ったりしつつも、なんとなく帰属意識や仲間意識も生まれてきて表には出さないけどそれなりに楽しいじゃん的な話です。あとお悩み相談の短編スタイルで、女の子にしか見えない男の子が出てきたり、小説家志望の邪気眼少年が出てきたりと、残念な方向に賑やかでもあります。
ただ、ぼっち寄り合いぬるま湯コメディというには、周りが色々見えすぎているというか、クラス内の立ち位置というものがしっかり作中に出てくるので、ギャグのようでギャグになりきれないような微妙なバランス感になっています。笑える残念系コメディではあるけど、笑えないラインを踏みそうなギリギリのラインという。
それは例えば、リア充グループは群れるけど、オタクはオタクで群れるからやっぱりぼっちじゃなくて、そこにも入れないからぼっちというあるある感だったり、途中から出てくる由比ヶ浜さんの立ち位置問題だったり。特に由比ヶ浜さんの話は、リア充グループの端っこでで空気を読んで人に合わせて生きてきた彼女が、自分の意志をしっかり持って生きようと残念な人グループの奉仕部に近づくことで、こう、微妙な人間関係というかなんというか立ち回りの難しさが見え隠れしたりしてもうやめて感が大変なことになっていました。
ただ、この作品の場合そういう部分がクライマックスで膨らんで破裂しそうになっても、最後は何故かご都合主義的に丸くおさまるのがまた不思議なバランス感覚。正直作品としてはちぐはぐさも感じるのですが、これはこれで味になっているような気もします。
そんな感じで、なかなか面白い一冊でした。いつでも戦闘態勢で常識で言っちゃいけないことまで何もかもを毒舌と冷ややかな視線にのせて躊躇いなく相手をぶった切る雪乃さんがむやみに格好良すぎるので次の巻にも期待しています。いや本当に、なまじ超優秀で超美人だけに性質が悪いですよねこの子!