ささみさん@がんばらない 4 / 日日日

ささみさん@がんばらない 4 (ガガガ文庫)

ささみさん@がんばらない 4 (ガガガ文庫)

ささみさんと情雨の不器用な友情っぽい話と、世界規模の神々の争いが表裏一体に描かれて、そこにネットネタやら下ネタやらまでぽいぽいと投げ込んで、ちょっと後ろ向きに頑張る感じで出来上がる不思議な感触の物語。作者が意図的に飛び回らせているっぽい視点といい、何もかもが適当なようで適当ともいいきれないような不確かさがあって、相変わらずすごく変な読み心地のある一冊でした。
アラハバキ』のリーダーとして、計画を進める情雨を動かす父親への想い。月読神社の巫女して生まれ育てられ、そして普通の生活を手に入れるために歩みだしたささみさん。本来なら絶対に交わることのない二人が学校で出会って……という展開は情雨はささみさんを敵と思っているのにささみさんが情雨の正体に気が付かないのでなんだかズレた方向へ。情雨と友だちになリたちと思うささみさんと、それを突っぱねながらも揺れる情雨の気持ち。それを間近で見るかがみのヤキモチ。使命とか境遇とか生まれとか、そういうものでがんじがらめにされた女の子たちの織り成す拙く不器用な友情手前の何かはとても良いものでした。衰退した『アラハバキ』の残りメンバーたちが、情雨の『アラハバキ』の目的に向かいつつも、そんな当たり前の幸せを情雨に見せてあげたいとも思っている辺りがまた。
ただ、そこになんというかきわどいネタを仕込んできたりするのがこの話の掴みどころの無さ。そしてなにより、彼女たちの交流は神々の争いと表裏一体であり、世界的なアレやコレやが大変だったりもするわけで。そしてそういった部分の設定はかなり作りこまれているようで、根本の部分はなんでもありに大雑把という、ある意味日本神話ベースらしいもの。この巻の最後に明らかになる、そこにおける『まつろわぬものアラハバキ』の意味は、そんな世界そのものに対するアンチテーゼであり、そこにあんな神があんなことであんな悪ノリをしてくる引きはバカバカしくも次の巻が楽しみになるようなものでした。
お兄ちゃんの正体も含めてそういった神話レベルの大きな話での次への興味もありつつ、同時に重すぎる役割に歪められた少女たちのプライベートな物語にも興味が出てくるという一冊。やっぱり最後までいまいち掴みきれなくて、でも私はこの作品が好きだと思える不思議なシリーズです。