ささみさん@がんばらない 6 / 日日日

ささみさん@がんばらない 6 (ガガガ文庫)

ささみさん@がんばらない 6 (ガガガ文庫)

『現代のトロイア戦争』で大事な保護者たちを失ったささみさんと情雨が、大切な人を取り戻すためにインド神話の最高神ヴィシュヌの元で、徳を重ねる魔法少女稼業を……という分かるような分からないようなあらすじの第6巻。
ちょっと間違えて触れれば壊れそうなそんな心と関係。大事な人達を取り戻そうとするささみさんと情雨も、そんな情雨の母親である玉藻前も、みんな不安を抱ながらそれでもがんばっていて。決して前向きなわけじゃなくて、転びそうで恐くて、触れたら壊してしまいそうで、不器用で勝手で、それでも必死に手を伸ばすように、寄り添うようにして生きている人たち。
これはそんな壊れものを描いた物語であって、けどそれをストレートに表現してはいないです。世界各国数多の神話と神々によって簡単に改変される、非日常は当たり前にあふれていて、いつでもどこでもひっくり返せるような確かなことはなにもない世界。その大きな流れに呑まれながらも、表面上で描かれるのは妙に凝った神話周りの、それを魔法少女のような今っぽい概念で置き換える設定であり、あ兄ちゃん譲りに変態なささみさんであり、百合百合した関係であり、何故か小学校でドッヂボールをする神々であり。
凝った設定とオタクネタとコメディとバトルと謎解きと、とにかく雑多な展開を混ぜあわせて圧縮して、から騒ぎのようになっている表面。根本のルールが如何様にもなるから、どこに飛んでいくか読んでいてさっぱり分からないトリッキーな展開。そんな滅茶苦茶なものに彩られながらも、でもやっぱりこの作品の芯の部分にあるのは、壊れものの世界で、すべてが叶うことのないそんな世界だからこそ光る人の想いであって。逆に言えば、それがあまりにも繊細だから、こんなにもごちゃごちゃとした何かで飾り立てられている訳で。それでもこの作品の中で時々ある、それがむき出しになるような一瞬が、私はたまらなく好きなのだと思うのです。
そんな訳で、もうただ大好きとしか言えなくなってきたシリーズ。次の巻もとても楽しみです。