ラブライブ沼にのまれました

危ないとは思っていたんですよ。
最初はまたG'sがぶっ飛んだ企画をと思っていた訳です。
シスプリハピレスフタコイべびプリの流れだと思う訳ですよ。
それも当初はそこまで人気があったわけでもなくちゃんと聞いたこともなかったわけです。
知り合いが推していたのでカラオケで見かけるくらいだったんです。


まず最初の間違いが去年のアニサマ
まあ、予習しますよね当然。夏だし「夏色えがおで、1,2,Jump!」鉄板だと思いますよね。
c/wに、「Mermaid festa vol.1」って曲があってですね、これがベタなラテン歌謡で絶妙に古くてツボったのです。もちろんアニサマではこの曲はやらなかったのですが、パフォーマンス自体は非常に盛り上がっていてちょっと見る目が変わった。


で、冬にアニメ化。
そこで合わせてきたのがベストアルバム。ここぞとばかりにラブライブプロジェクトのほとんどの楽曲を収録した2枚組。アニメ人気から過去シングルを買わせるのではなくてここでベストを出して、しかも楽曲の出し惜しみをしなかったこと。大英断だと思います。曲に自信があったんだと思います。勝負かけてきたんだと思います。
年末の特番を大晦日にチラ見した時からこれは危ない危ないと思っていたんですが、90年代臭漂う楽曲が回避不可能なところが多くて、これでちょっと一気に傾いて、興味が出てきたところにアニメ放送開始。


1話を見たときは思ったより話がちゃんとしてるなあとか、CGのダンスはやっぱり浮くなあとか、キャラデザ少し古い感じかなあとか、そんなことを思いつつ見ていたのですが、見ていたのですが、あのですね、3話が、もうね、ちょっとね。


こういう企画物のアニメなので、あんまりストーリーに期待なんてしていなかったのです。何となくがんばって、なんとなく成功して、ゆるくゆるくいくものだと思ったのです。そんなうまくいくわけなくても細かいところは置いておいて販促! みたいなのを想像していたわけです。
確かに頭の片隅にはあった。順調に進んでいるように見えて、これほんとうに大丈夫なのかなって、思わなくはなかった。
でも、あれだけ練習して、ビラもまいて、曲も押し切って手に入れて、衣装も作って、上手いこと演出をしてくれる人も見つけて、じゃあ上手くいくんじゃないかと。なんだやっぱりトントン拍子じゃないかと。


幕が開いた瞬間、誰もいない講堂。
今まで流し見をしていたはずの画面から目が離せなくなりました。


でも本当に凄かったのはその後。
皆を引っ張ってきた穂乃果が、一番ショックが大きかっただろう穂乃果が、あそこで一度笑顔を作った。スクールアイドルを目指す時、最初に笑顔の練習と言っていたものが、ここで活きた。けれどそれも長くは保たなくて、崩れそうになった時に、花陽が来た。唯一最初から彼女たちのアイドル活動に興味を持ってくれていた花陽があの瞬間にあそこに来た。


そして始まる初めてのライブ。
それが、表情から、歌声から、ここまで頑張ってきたものを感じさせてくれる出来で。


それが終わって、最後の最後。会長に切った穂乃果の啖呵。
誰も見てくれないかもしれない、ずっとこのままかもしれない、けれど歌い続ける、踊り続ける、そしていつかここを満員にしてみせる。歌が上手い人も、踊りが上手い人も、可愛い人も世の中にはたくさんいて、けれどその覚悟こそが、舞台に立ち続ける人とそれ以外の人を分ける一線なのだと思わせてくれるその根拠もない言葉を、周りで聞いていた人たちがのちのμ’sのメンバーであるという出来過ぎた奇跡に、グっとくるものがないといったら嘘になる訳で。


一番の底辺から、奇跡のようなことが折り重なって走りだしたスクールアイドルプロジェクト。そうなればもう、応援せざるを得なくなってしまうじゃないかと。



ここまでで気がついたのが、ラブライブは「ファンと一緒に走るアイドル」であるということ。
ラブライブはあくまでもスクールアイドルのプロジェクトであって、プロではない熱血部活ものの文脈の物語であり、ファンはそんな彼女たちと一緒に走っていくものであるのだなと。
そう思ってOP曲の歌詞をちゃんと聴くと本当に恐るべし畑亜貴と思うわけですが、それを思い知らされたのもこのアニメ3話であって、プロジェクトの始動自体から一緒に走れていなかった人たちを、ここから一緒に走り出させる力のある話だったのだと思います。


そしてそう思ってから今までの作品を見ていくと面白いです。
ラブライブには3つのアングルがあって、それはラブライブという作品自体の歩みと共に世に出されてきた作品であり、アニメから始まったスクールアイドルの立ち上げの物語であり、そして中の人たちの頑張りの物語であるのですが、これがまた全然別々の話のはずなのにラブライブの名のもとに絶妙に絡み合うのが面白いなあと。


私が一緒に走りだそうと思ったのはアニメなのですが、これまでの作品を見るとこの子たちが行く行くはこうなるのかと思ったり、シングルを重ねるごとに豪華になっていくMV(多分リアル予算も増えてるし作中予算も増えている)にμ’sの歩みを感じたりもできます。
そして中の人のライブであるFirst Love Liveを見て感じる、作中とのシンクロ感。
正直歌も踊りもステージングも上手いかといえば全然上手くはないと思うのです。けれど、これがファンと一緒に走るスクールアイドルのプロジェクトのライブなんだと思うと、全く別の見え方をしてくる。
歌も踊りも本業じゃない人がたくさんいる中でこのステージまでたどり着いたこと、ライブまでに1年以上の時間がかかったこと、その中で見せる最大限のパフォーマンス。そして感極まった最後のMC。
その積み重ねは、正直作中の出来事とは全く関係がなくて、でもあのアニメのファーストライブを見た後でこれを見ると、どうしてもオーバーラップするものがあって。たぶん、このライブが先にあって、アニメのライブを見た人は全く逆の何かを感じているはずで。


時制も次元も全然違う三つのばらばらの視点がそうやって今この時に絡み合っているから、それぞれの視点を移動しながら見ていくと、その度に新しい見え方が生まれてくる。
意図されたものか偶然のものなのかはわかりませんが、そういう多層的な楽しみ方ができることが、このプロジェクトの魅力をひとつ押し上げていると同時に、沼を果てしなく深くしているのだなと思います。


そんな訳で現状沼の中。
まだしばらくは溺れているんじゃないかな……と。

ラブライブ! μ’s First LoveLive! [Blu-ray]

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