ドラゴンチーズ・グラタン / 英アタル

ドラゴンチーズ・グラタン (このライトノベルがすごい! 文庫)

ドラゴンチーズ・グラタン (このライトノベルがすごい! 文庫)

病で苦しむ少女に一杯のスープを飲んで笑ってもらうために、そのために食材を求めて旅に出る少年の物語。言ってしまえばドがつくほどの王道なのですが、そのベタさが素晴らしい、そんな気持ちになれる小説でした。
シェフ見習いの少年レミオ、どうにも手際の悪い彼が目指しているのは医食同源的な考え方を取り入れた、潰えた学問でもある食療学の道。そんな時出会った少女クレアは、とある事情によってものを食べることができなくて、衰弱していくばかりで。だから、食で彼女を救いたいと、レミオは食材を求めて旅立つというお話は、なんというか男の子という感じ。
その旅先でアイソティアという種族の少女アトラ、竜殺しに執着する男バレロンとの争いに巻き込まれという展開なのですが、そこからは普通にバトルものな感じになってしまうのちょっと残念なところも。食療学というレミオの志すものも、そうさせた彼の過去も、アトラという異種族の少女が置かれた境遇も、アイソティアの母に連れられたクレアのことも、全ては繋がってはいるのですが、なんというか上手く連動していないような感じがあって、別々の話が動いているように感じられたのがちょっともったいないように思いました。
それと文章がかなり読みにくいというか、特にアクションのシーンになると何が起きているのか把握しづらいところがあってちょっと辛かったり。
とはいえ、そんな新人作品らしい荒い部分も多分にありつつ、なによりそんなもの振りきって突き抜けるような真っ直ぐさが魅力的な作品だったと思います。話もキャラクターも非常に気持ちのよい、すっきりと良い気分で読み終えて、楽しかったと思えるような一冊でした。