クジラのソラ 01 / 瀬尾つかさ

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

すごく面白かった!
異星人が地球にもたらした艦隊を操作して闘う《ゲーム》に挑む少年少女の物語。単純に《ゲーム》というものに挑むスポーツものとしても楽しめますし、異星人が地球人に多大な見返りとともに《ゲーム》をもたらし、そしてその世界大会優勝者を宇宙へ連れ去る理由などを考えても面白いという一粒で二度美味しい構成。
4人でチームを組んで《ゲーム》に挑むので、主役となるキャラクターが多数いるのですが、物語を進めるために存在するような感じではなく、それぞれの意思を持って動いているように見えるのが素敵です。天才メカニックとして小さな頃から《ゲーム》の暗い面まで見てきた聖一の思いも、宇宙へと旅立った兄を目指して《ゲーム》に挑む雫の思いも、《ゲーム》に大切なものを奪われた過去を持ちながら、雫たちと勝利を目指す冬湖の思いも、能天気バカの様に見えて細かい気配りを忘れない智香の思いも、きっちり伝わってくるからチームスポーツとしての面白さが感じられるのだと思います。スポ根になるほど泥臭くはなくて、それでも悩んだりぶつかったりしながら《ゲーム》に挑む様子が私の好みに良く合ったというのも面白かった理由かも。チームメンバー以外のキャラクターも良く動いていましたし。準太のこれからに期待。全体としてスポーツものとしてはベタな展開が多いですけど、上手く描けば非常に魅力的になるのがベタでもあると再確認しました。
そして、《ゲーム》周りの設定も魅力的。政府による働きかけのようなパワーゲームや、《ゲーム》によって失われるもののような暗部も知りながら、闘っている少年少女は応援したくなります。そして、アウターシンガーや異星人の目的といった部分がこの先への興味を惹きます。アウターシンガーは要するにスーパーサイヤ人みたいな能力ですが、その存在自体に謎が隠されてそうですし。
あとは、イラストが綺麗です。ビジュアル的にもイメージが広がりそうですし、キャラクターや物語自体もアニメに向いてるんじゃないかなぁと、ものすごく気の早い話ですが思ってみたり。
色々と魅力が詰まっていて、さらにこれから面白くなりそうな物語なので、続きにも非常に期待しています。
満足度:A