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星読島に星は流れた / 久住四季

ずっと待ち続けた久住四季の新刊がついに……! というだけで割りと胸いっぱい感があるのですが、読んでみてしみじみと良い作品だったので、本当に良かったなあと。待ったかいがあったというものです。
という訳でミステリ・フロンティアからの新刊は、年に一度ある時期に隕石が降ってくるという星読島、その主であるサラ博士に集められた7人の人々、そして外界から途絶された孤島で起きる殺人事件というとてもミステリらしいミステリ。問題となるのは誰が、どうやって、何のために殺したのか。それを妻子を失いアメリカで町医者をしていた主人公の盤が追いかけるような形のお話。
話としてはきっちりしっかりで、びっくりするようなトリックがあったりとか、斜め上にぶっ飛んでいくような展開だったりとか、一点突破で突き抜ける魅力だったりとか、そういうものはないオーソドックスな感じ。ただ、非常にリーダビリティが高い文章とキャッチーなキャラクターとしっかり積み重ねていく丁寧な展開で読みやすく印象が良いです。しかし天才少女科学者ツンデレ系な美宙とマイペース底が見えない系美人科学者(車椅子)なサラ博士のダブルヒロイン(?)が、わざわざプロフィールにライトノベル界出身と謳われるだけののことはあるというか、ベタだけどやたら魅力的だったのでちょっとズルいぞこれという感じが。もうどう考えても登場した瞬間から何かあるぞこの人ってなるサラ博士、好きです。
それは置いておいて、その端正さだけでなくこの作品の魅力だったと思うのはそのテーマ。星、宇宙、人類最後の日、孤島に立てられた観測所。一年に一度降ってくる隕石。そんな浮世離れしてロマンあふれる設定と、その裏を走っていた地上を這いずる人々の欲と執念。ただ、素敵だったのはそれによってこのロマンティックな世界が壊されるだけではなくて、暴かれた後にもう一度そのテーマをかたどって別のものが浮かび上がってくるところ。その時に、このテーマであった意味、そしてこのタイトルだった意味が明らかになるところが、とても美しい作品だなと思いました。
決して派手さや衝撃のあるような一冊ではありませんが、読み終わった時に欲しいものが欲しいところにすっとハマったような感覚のあって、良い物を読んだなあと素直に満足できる作品でした。面白かったです。