カーリー / 高殿円

何か説明しようと思っても、作者があとがきに書いた「ものすんごい初恋ラブ」で「女子寄宿舎もの」というのと、各所で言われている「ハウス名作劇場」という3つのフレーズで全て説明されてしまう気がしてなりません。そしてこのキーワードにピンと来たら読んで損はない完成度。
前半は新しくインドの女子寄宿舎に来た純真な少女シャーロットと美しい少女カーリーの交流を軸にとんでもなく甘い砂糖菓子のようなべたべた女子寄宿舎モノが展開。いじめっ子に秘密のお茶会に、そしてカーリーに胸キュン!みたいなもうラブ涙色な展開に正直かなり置いてきぼりをくらいました。全体を通してのこのロマンチック浮かれモードな展開は甘過ぎて正直受け付け難い部分があるのですが、雰囲気的に王子様が現れちゃってもこの世界では正しいし、カーリーがああでもこの世界では胸キュンなんだという奇妙な説得力があります。
そして後半から物語りは急転してきな臭い話に。大人の事情と政治と戦争。英国領インドという土地の特異性と、カーリーやシャーロットの生まれの秘密。子供の真っ直ぐな疑問を握りつぶす大人の論理。激動の世紀で過酷な運命にさらされる二人の行く末が気になってしまって、次がでたら雰囲気が合わなくても買ってしまいそうです。
しかしファミ通文庫はどこのターゲットを狙ってこれを出したのでしょうか。なんだか中高生男子はあまり読まなさそう……。
満足度:B