レジンキャストミルク 3 / 藤原祐

3と銘打ちつつも、上下巻構成の上巻なのでこの一冊だけではなんともいい難い部分があります。着実にストーリーの下準備をして、ついに動いたところで次巻へ続く!となっているので。それでもこの作品の持つ捻くれたダークな部分は、十分に味わえる一冊でした。
ほのぼの×ダークとキャッチコピーがついていて、基本的には学園異能的な日常/非日常の中で前者はほのぼの、後者はダークという形です。ただ、前者がほのぼのしているのは、登場人物たちのやりとりと硝子の一人称の語り口のすっとぼけた笑いがあるからであって、決して日常がユートピアしてる訳でもなくて、むしろ日常がほとんど壊れかかってるという点が暗い。特に、1、2と確実に無限回廊に侵食された日常は取り繕われてはいても決して取り戻されてはおらず、むしろどんどんと壊れていっているというのが救い難いです。そしてその中でもポジティブに見える硝子が感情を得ていく過程すらも、更なる悲劇の材料にしてしまう作者の徹底したダークさはむしろ素敵。児童虐待に倒錯した人形趣味みたいなテーマを取り込みつつ、下巻で全てが繋がった時に何が起こるのかが楽しみです。悲劇しか待っていないということを匂わせるエピローグで幕を明けているので、きっと悲劇なのでしょうが。
ほのぼの部分では宴会部分での密の酔っぱらいっぷりが素敵でした。いいキャラクターです。下巻では密と君子の間に起こった過去の事件も明らかになりそうで楽しみ。あと「職安戦隊ハローワーカー」は笑いましたが、ネタとしてあまりにブラック過ぎるのではないかと……。でもちょっと見てみたい。
満足度:B+