黄色い花の紅 / アサウラ

黄色い花の紅 (集英社スーパーダッシュ文庫)

黄色い花の紅 (集英社スーパーダッシュ文庫)

銃が好きで好きでたまらないという、その愛情は伝わってきました。
スーパーダッシュ新人賞大賞受賞作。
銃規制が緩和され、制約は大きいものの銃を持つことが可能になった日本を舞台に、ヤクザと外国人組織、そして警察が絡む抗争を描いた話です。でも、メインとなるのはその抗争自体ではなくて、その抗争にかかわることになった便利屋のお姉さん奈美恵と、守られるだけの立場から自分の力で戦うことを選ぶヤクザの娘の話。それぞれが第一部、第二部で、奈美恵の話は舞台や人物紹介にあてられてる感じが強く、実質メインとなるのは紅花というヤクザの娘が、お人形として育てられてきたカラを破り、銃を手に自らの力で戦おうとする部分です。
少女と銃というモチーフであるにもかかわらず、不条理感やミスマッチから来る萌えみたいな感じはまったく無く。ただ、弱者から這い上がる存在を描こうとしたらたまたま少女になったという感じ。自分を追い詰めて追い詰めて、銃という力を手にして立ち向かう紅花の心理描写は変なエネルギーがあって、なかなか良かったです。ただ、よくよく考えると、銃を手に戦場で人を殺すような道を選ばなくても、現実と闘う方法はあったような感じがするのですが。
そんな感じで一応ストーリーはきっちりとあるのですが、どちらかというと主役は銃という印象。やたらと気合の入った銃の描写に大量の薀蓄、銃の持つ圧倒的な力というものに対する憧れと恐怖、そして銃弾の降り注ぐ戦場での血の臭いと硝煙の臭い。そういったものが好きで好きで書きたくて書きたくてたまらないという感じがするのが、少々の粗は流せるだけの、この作品のエネルギーであり魅力かなと思いました。個人的には、そういったものがいまいち好みではないので楽しみきれなかった印象です。
続編はありそうな感じ。紅花はこれから修羅の道に入って女組長くらいにはなりそう。ただ、個人的には三十路過ぎて人生に迷いつつ、戦場で銃を打ち続ける奈美恵の話が読みたいかなと思います。
満足度:B-