アキハバLOVE 〜秋葉原と一緒に大人になった〜 / 桃井はるこ

アキハバLOVE

アキハバLOVE

わたしをあの時、救ってくれたのは、インターネットじゃない。「人」だ。わたしを励まし助けてくれた、人だ。ネット上で会えた、人だ。隣で応援してくれた、人だ。今、わたしは強くそれを言いたい。ありがとう。

桃井はるこの初エッセイ。短い文章の集められたエッセイ部分と、過去のweb日記、そして雑誌や新聞への連載から構成されています。桃井はるこという人の軌跡や、どんな人なのかを知るにはもってこいの一冊です。
一番面白かったのは過去のコラムの数々。先見の明があるというか、通信というものの可能性を皮膚感覚で凄く的確に捉えていたのだなという気がします。オタク考察とかも中々面白いです。
でもこの本の本質は、アニメやゲームが好きなアイドルオタクで、学校に馴染めなかった少女の描いたサクセスストーリーです。そこにある要素は、パソコン通信に、インターネットに、秋葉原、そして音楽。居場所の見つけられなかった少女が、自分を表現する場所を見つけ、そしてそこから夢を広げていく姿が、とても素敵です。遠くの夢みたいなサクセスストーリーじゃなくて、今から少し前の時代だから成しえた、そして今の私の身近にもある要素から成る、等身大というのはおこがましいかもしれないですが、手の届かないところあるわけでは無いと思える軌跡。どんなに閉塞したように思える世界でも、自分の想いが認められる場所は必ずあるんだという強いメッセージは、やっぱり勇気付けられるものがあるのです。
話は変わりますが、私は女性のオタクに憧れを抱いています。それがどこから来た、どのような感情なのかは自分でも分からないものの、確かにそういう感覚があります。そして、そういう感情もあってか、私は桃井はること言う人のことを凄い人であるというだけでなく、尊敬すべき人だと思っています。もちろん、世代が私のほうが下というのもあり、こうして書かれたことの全てに共感できるわけでも、肯定できる訳でもありませんし、それはそれで当然のことだと思います。それでも、こうしてこの本を読み終わって、やっぱりこの人には憧れと、尊敬と、あと少しの羨望の入り混じった感情を感じるのです。