円環少女(サークリットガール)〈5〉魔導師たちの迷宮 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 長谷敏司,深遊
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/04
- メディア: 文庫
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前の巻から始まった公館vsワイズマンの争いが、いよいよ本格化してきました。
このシリーズはどうしようもない状況の中での闘いを描いていて、主人公の仁が所属する公館という組織も決して正しさの保証された組織ではありません。むしろ刻印魔導師の使い方を始めとして、メイゼルの存在が映し出すように多くの欺瞞を孕んだ組織です。相手方の魔導師たちにも一定の正しさはあり、結局何が正しいのかは誰にも分からない、それでもやらなければならないという状況。そんな中で仁が一つの決断を下す訳ですが、それは一つの想いを貫くための道であると同時に、多くの大事なものを捨てる道でもあります。これから二人がどうなっていくのか、楽しみに待ちたいと思います。
そんな厳しい世界のあり方を、説得力のあるものにしているのは、今回出てきた日本の歴史という重いテーマを絡めた設定なのかもしれません。学生闘争や国のあり方を持ち出してくる辺りはびっくり。ただ、それを踏まえた上での国城田というキャラクター、そして地下都市の存在といった辺りは物語にしっかり絡んで厚みのあるものにしている気がします。
そしてきずな、エレオノール、といったキャラクター達のそれぞれの想いと行動、地下の住人達にも当たり前の日常があるという事実、そういったものが複雑に絡み合ってきてこの先の展開への期待値は非常に高いです。キャラクターも、ストーリーも、設定も、世間では読みにくいと言われる文章も、濃密で魅力的で本当に大好きなシリーズになってきました。
あと、あの演出は、イラストがあるからこそできるものだと感じました。一瞬息が止まるくらい衝撃的。
この地獄にも希望があるのだと信じつつ、とにもかくにも早く続きを!
満足度:A