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惨劇に挑め
その言葉の意味にようやく気がついた6編目。
何かもうここからは何を語ってもひぐらしという作品の構造についてネタばれになりそうなので、まだひぐらしを読んでいない人はこのエントリは読まない方が良いかもしれません。
疑心暗鬼とディスコミュニケーション。何度も何度も繰り返す雛見沢という世界の中で、ただ惨劇の回数を重ねていく物語は、その二点に端を発しているのだと気づかされる話。だからこそひぐらしのターニングポイントに位置づけられるのでしょう。
メインのキャラクターとなる少年少女たちが、それぞれに重い背景を抱えていること。オヤシロ様信仰が続いていて、御三家と呼ばれる家の力が非常に強い、雛見沢という地域の特殊性。それを前提として、ある者は家族のために、ある者は最愛の者のために、ある者は自らを守るために、疑心暗鬼にかられて狂っていくことで起きる惨劇。
今までそれを起こす側から描かれていたその惨劇は、今回妄想と疑心暗鬼に囚われていくレナの姿と、それを何とか止めようとする圭一の姿を両面から描くことで、哀しくも喜劇じみた物語に姿を変えます。レナの思い込みの破たんぶりが今までの話と比べても酷いのも、その辺りをくっきりとさせるためのような感じ。
犯してしまった罪を償うということ、人はやり直せるということ、仲間を信じるということ、人は一人ではないということ。そんな前向きなメッセージで惨劇を打ち破らんとするこの物語は、確かに今までと比べて光が見えます。それでもレナが一人目を手にかけた時点で、もう狂ってしまった歯車は取り返しがつかなかったのだとも。
ひぐらしの物語は、事件が起きてそれを解決するというものではなく、事件を起こさないために、繰り返す惨劇の中から事件を防ぐ術を探していくものに思えます。そういう意味での「惨劇に挑め」。だったら、少しずつ明らかになる雛見沢の真実の中から、最初から道を外さないための術が見つかるはず。
ならば、ここで圭一がループに気がついたことと惨劇に至る運命を止めたことは、大きな前進なのでしょう。仲間を信じて、共に辛い運命に立ち向かえる。それを知った彼らは、今度は幸せな未来を掴むために戦いに挑まなければならないのだとしても。
願わくば彼ら彼女らが、これ以上理不尽な運命に潰されてしまわないことを。