- 作者: 竹宮ゆゆこ,ヤス
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: 文庫
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雪山で遭難し朦朧とした大河が竜児に告げた衝撃の言葉。それを全て忘れている大河。それを知ってしまって、忘れた大河に合わせて無かったことにしようとして、でも昔のようにはいられない竜児。動き出した関係は止まらずに、それぞれの想いをのせて物語は加速する。そこにさらに重なってくる、将来の問題、進路の問題、そして親子の問題。青春をこれでもかと詰め込んで疾走する展開に、心を持っていかれます。
お互いのためを思い、お互いの幸せを願いながら、でもそれ故に自分の気持ちを殺してしまって、そのことで関係がこじれる不器用さ。みんな幸せを求めていたはずなのに、今まで通りの関係は二度と戻らなくて、もがく様に高校2年生という時を生きていくキャラクターたちの姿は鮮烈。それぞれのキャラクターに血が通ってると感じさせるだけの心理描写、そしてたった一言でハッとさせられるような言葉の数々は、思わず息を飲むくらい。私自身が決して器用な人間ではないだけに、一緒に切なくなったり、苦しくなったり、感情を爆発させたりと、読んでいて胸にクるものがあります。
実乃梨が心を決めて自分の道を歩み始め、亜美が気が付き過ぎるが故に苦しんできたその心情を吐露し、そしてついに大河が竜児に向き合う覚悟を決めて、竜児も自分の気持ちを決めて。怒涛のような一連の展開を経て、迷いの中から自分の答えにたどりつける、そんな予感の中で持ち上がった問題は、避けては通れない道。
きっとまた迷って悩んでぶつかって、簡単にはいかない道程が待っているのでしょうが、今はただ、この濃密な青春を駆け抜ける少年少女の行く末を座して待つばかりです。
2人は走り出して、時計はもう止まらないのだから。