強くないままニューゲーム stage1-怪獣物語- / 入間人間

クソゲーと呼ばれるゲームがあって。それはいろいろな意味があるけれど、難易度がやたらと高くて、ヒントが異様に少なくて、しかもそもそもどうしてそうなるのか理不尽だったりするようなゲームを呼ぶこともあって、これはまさにそんなゲームに巻き込まれた男女二人のプレイ記録、みたいな小説でした。
ある日高校で授業を受けていると突然視界の隅に現れるシステムメッセージと残時間(=残機)。やがて現れる巨大怪獣。あっという間に死亡してゲームオーバー。そしてまた同じ地点から再開。そのループを自覚しているのは藤と敷島という二人の高校生だけで、二人は必然的に何度も死んで繰り返しながらこの「ゲーム」のクリアを目指さざるをえなくなって。
残機だけは潤沢な中、ひたすら理不尽な難易度のゲームへのトライアンドエラーを繰り返し、そして毎回死ぬ。ひたすら死んでコンティニュー。やってることはスーパーマリオブラザーズ2くらいのものかなあと思いつつ、プレイしている方ではなくて実際にその世界の中にいる二人が主人公なので切実さは比べ物にならない訳で。
死ぬ時には誰でも容赦無く死ぬし、その殺伐さは相当のものなのにどこか軽いのも入間人間作品らしい感じ。そして藤と敷島の間に生まれる妙な信頼関係みたいなものも、入間人間らしいキャラクターの関係性でやっぱり好きだなあと思います。それにしても強気で口の悪い敷島さんの最後にとった手段はエグいというか、そうやるのかという驚きが……。と言いつつも相応の弱さがあって、だからこそ二人で立ち向かうというのがいい感じ。そこにイレギュラー的に絡んでくる頭おかしかわいいクラスメイトの山崎さんも良いキャラをしていました。
背景設定もなければ真の黒幕もいないことが明言されるわ、クリアのランク判定によってルート分岐するわと、完全にゲームプレイ小説、しかしそのゲームはクソゲーという新境地に到達している感のあるこのシリーズ。面白いかと言われれば面白くはないのですが、この新ジャンルがどこへ向かっていくのか気にならないといえば嘘になる、そんな一冊でした。