わがままちえちゃん / 志村貴子

ちえとさほ。一人は死んでしまって、一人は生きている姉妹。そうしてこじらせてしまった少女を描いた作品。そのこじらせた心が物語にも反映されているようで、非常にトリッキーな構成になっています。語られることが本当か嘘か。誰が言っていることが正しいのか。その時に何が起きたのか。わがままなのはちえちゃん?
ある意味ミステリ的な語りの構造で、ただ描かれていくのは真実なんかではなくて、紐解いても紐解いても複雑にねじれてしまっている一人の少女の姿。そのすべての起点に失ってしまったという体験があるということだけ。それは決して戻ることのない事実だから簡単に折り合いがつく訳がなくて、そこから積み重ねたものは自分を責める意識さえも自分を守るための嘘かもしれなくて、ただそれでも生きていくしかない。
ちなみに読んでいる間、放浪息子の千葉さんみたいなこじらせ方だなあと思っていたら、あとがきで作者も同じことを言っていたのでやっぱりおんなじタイプの面倒くささなんだな! と思ったり思わなかったり。