【ゲーム感想】ゼノブレイド2

ゼノブレイドDE(1)をやって万人に勧められる面白いRPGだ! って思ったのが前回の出来事なのですが、ゼノブレイド2はですね、好き嫌いははっきり分かれるけど好きな人には死ぬほど刺さるやつですねこれ。ゼノシリーズってそういうものだよねという安心感すらある。いやでも面白いです。色々言いたいことはあるけれど、印象に残ったシーンは間違いなく多いですし、DLCの黄金の国イーラをやることで2度美味しい構造になってるのが凄い。

 

DEが全体的に上品な仕上がりだったのと比較すると、とにかくもう熱量で押し切って突破するタイプのRPGだと思います。カレーにカツと唐揚げとハンバーグを載せて、付け合わせに豚骨ラーメンが付いてきたくらいのハイカロリーなメインストーリー。話筋はがっつり王道の少年冒険譚でボーイミーツガールなのですが、とにかくもう全部盛りで男の子の夢と希望とロマンを詰め込みましたと言う趣があります。

ただ、敢えてそうしているのかなと思うのは、今の時代にこの言ってしまえば古臭さのある王道を叩きつけるにあたっては、押し通すだけの馬力が必要だったのかなと。結果としていろいろ突っ込みたいところも多々あるし、ご都合主義的では思うこともあったのですが、そんなことは全部すっ飛ばしてレックスとホムラたちの物語に引っ張り込まれて、最終話はもうボロ泣きするくらいに引き込まれる力がありました。

少年冒険譚だと言いましたが、この作品はレックスが子供であることが凄く重要なんだろうなと思います。彼は未熟で世界を知らなくて、でも目の前のことに真っすぐで人を思いやれて何より未来を信じられる、そういう純粋さを持っているキャラクター。そして彼の前に立ち塞がるのは、立ち位置は違えど、世界や人間、そして自分自身に絶望してしまった大人たちでした。過去に消えない傷を負い、諦めてしまった人たち。その閉塞を突き崩せるのは、レックスが何も知らない子供で、真っすぐに明日を見据えられるからこそ。そんな彼だから、繋げた絆があって、たどり着いた楽園がある。

というか、諦めなくていい、絶望しなくていい、そうやって掴み取れる未来があるんだというのが、ゼノブレイド2という作品の大きなテーマなのだと思いました。だからこそ、敢えてこの時代に旧い物語を蘇らせる必要があって、そのためにはここまですべてを詰め込む必要があったんだろうと、そんなふうに思います。まあ、多分に趣味性を感じるところはありますが。

 

ゲームとしてはDEと基本は同じく、ストーリーを追いかける他に、広いマップを探索し、数多いクエストをクリアするところに特色があります。更に特徴的なのはブレイドのシステム。これはストーリーの根幹にも関わってくるところで、コアクリスタルから同調し、その人と共に生きることになる彼らの存在がゼノブレイド2の鍵になります。

システム的にはブレイドをガチャの要領で引いてそれを育ててというやり込み要素があり、さらに様々なスキルで冒険の幅を広げたり、バトルの奥深さにもなっているのですが、これがまた大分深そうで、その分取っつき辛さのあるもの。私はもう途中からほぼ育成をせずに突っ切ってしまったのですが、ハマればハマるほど沼だなと思いました。あとゼノサーガ好きとしてはなんとかKOS-MOSが引きたかったのですが、排出率低すぎて無理でした。悲しみ。

ブレイド育成以外のシステムも、沼は深いが取っつき辛いのが共通しているように感じて、クエストもDEに比べると手間がかかるけどストーリーに厚みがあるものが多かったり、マップも高低差の概念やフィールドスキルが無いと出来ないことが多々あってやり込み特化ゲームという印象があります。もちろん全く触れなくてもクリアはできる(ほぼそうした)のですが、もう少し片手間に触って楽しめるような作りだとよかったのにとも思います。クエスト進めようとしたら、レベルの足りないフィールドスキル求められて進まなくなるとか、何度か繰り返してクエストはひとまずもういい! ってなってしまったので……。

それとマップなんですが、高低差の概念が入って、ルートガイドがなくなったことでまあよく迷うこと迷うこと。目的地の方向と高低が分かるコンパスは出るものの、上下移動ができる地点が全然別の方角にあることも多々ありあまり役に立たず、マップも高低差がなかなか読み解けないので非常に難儀しました(これもクエストを投げた理由でもあり)。あと、マップが走破したところを塗りつぶしていくタイプではなく、最初から全部出ているので、逆にどこに行ってないのか分からなくなるのも辛いところ。

そしてこれがダンジョンと組み合わさると、もうどこに行けばいいのか分からないしモンスターに襲われまくって走って逃げてるうちに更に迷ってユニークモンスターに襲われ殺されるみたいな事故が多発。そうだよエルピス霊祠とモルスの断崖、お前らのことだ。あとあと、レベルの低い敵と戦ってるうちに、高レベルモンスターが俺も混ぜろよとばかりに入ってきて全滅するのも、言いようのない理不尽を感じたり。

そんなこんなプレイヤーに優しくないところも多く感じたのですが、じゃあクリアできないのかというとそんなこともなく、色々考えてトライアンドエラーすれば育成なんてほぼやらずにストーリー最優先で進めてもきちんと突破はできるのでゲームとしては大変に正しいものだとも思います。DEがあまりにノンストレスの作りだったので、甘やかされたツケをここで払っているという気も。

その辺は戦闘も同じで、ドライバーコンボとブレイドコンボを同時に意識するのも目押しでキャンセル入れるのも敵の動きを把握するのも全部同時になんてできないわってなるのですが、理屈が分かってくるとちゃんと高ダメージを与えてクリアできるという楽しみがあるものでした。ボス戦もまあ何度も死にましたが、その度にああしたらこうしたらと試していくと、ふと倒せてしまうポイントがあったりして、ゲームとしては悔しいけどよくできてるなと思います。何度もお前ふっざけんなよ!! って思ってはいるのですが。

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

本編プレイ時にはレックスの視点でずっと追いかけていて、これは先に書いた通り、ド王道の少年冒険譚。何度も何度も危機が訪れ、その度に覚醒演出(BGMのcouter attackがまた良い)での反撃、特にプネウマの覚醒シーンでテンション爆上がりしたり、最後の別れのシーンでぐずぐずに泣いたりと、彼のまっすぐさとに引っ張られるように楽しめたものの、色々と都合の良いところも感じました。

ただ、別れのシーンからエンディングに突入し、曲の歌詞がホムラからレックスへの想いになっていることで追い打ちを食らい、Cメロで別れを歌っていた歌詞がもう一度だけ時間をという気持ちに変わっていくのに合わせて様子が変わり、ラスサビ歌詞に合わせて再同調でホムラとヒカリが現れてのタイトル表示「第10話 そして少年は少女と出逢った」は完璧すぎてなんかもう全部良かった、最高だったという気持ちに。

大人になれよと言われて別れたけれど、無理やりにでもハッピーエンドに引き戻すのが、やっぱりそういう子供の真っすぐさを謳うゲームなんだなとも思ったり。

 

後はキャラクターはやっぱりみんな好きなのですが、中でも好きなのはニア。彼女もまたマンイーターであるが故に追われて諦めていたものをレックスに出会って救われて、だからこそ本当の自分を出せたブレイドニアのイベントが非常に印象的でした。思わずその後のパーティ編成をニアをブレイドで使うために大幅に見直したくらいに。あとシンが最後にニアにかけた言葉さあ!

どうあがいても負けヒロインだよなあとは思うのですが、どうか幸せにと思います。

あと亀ちゃんことジークも、序盤の胡散臭い関西弁を喋るギャグキャラ路線から後半に来ての頼れる兄貴分っぷりが最高でした。敵ではあるが、自分を救った人でもあるマルベーニに向けての最後のつぶやき、苦みがあって良かった。

 

 

とここまでが本編をやっての感想。で、「黄金の国イーラ」ですよ。

システム的な改善が入ってかなり遊びやすくなっているところも良かったのですが、物語の位置づけとそれによって本編の見えなかったところが見えてくる構造が凄かった。

 

本編の中で断片的に回想されていた500年前の聖杯大戦、つまり古王国イーラが雲海に沈んだ事件があり、シンとヒカリの運命を変えた出来事でもあるそれ。シンのドライバーであるラウラ、英雄と後世に伝えられるヒカリのドライバーだったアデルを中心に描かれるのは、約束されたバッドエンドへ向かうストーリー。

いやもうほんと辛い。パーティメンバーがみんな魅力的で、イーラという国も魅力的で、でも沈むんですよこの国。プレイヤーは滅ぶの知ってるの。特に終盤、クエストをこなしてヒトノワと呼ばれるもののレベルを上げる必要があるのですが、このクエストの内容がメツに襲われたイーラの復興関連で、街の人たちの悩みを聞いたり助けたりするうちにどんどん愛着がわいていくんですよ、滅ぶと知ってるこの国に! もう敵国に潜入してその住人の温かさに触れたスパイの気分ですよ。

エストをこなすとヒトノワ=人の輪が広がっていき、人々が連帯して更にいろいろな難題を解決して、いつの間にか街は一丸となって住人たちの口からは未来を見た希望が出てくるようになる。そしてその中心にラウラとアデルがいて、一身に期待を背負って、メツを倒して帰ってきてねと言われ、戦いが終わったら何をするんだと言うのですよ。

でも滅ぶんですね、話を進めると。あまりにあっけなく。あんなに希望に溢れていた人々と街が、天の聖杯の力で一瞬にして崩壊する。その力の絶大さと、あれだけ希望を持たせた中で何も救えなかったという悲しみが、ヒトノワを繋げたからこそ全部跳ね返ってくる。彼らのことなどよく知らなければ、まあそういう歴史だもんねで済むことが、強制でクエストをこなさせることで無理やり自分事にさせられる。いやもう完璧なゲームデザインにして、どんな鬼畜の仕様かと。

 

そしてイーラで感じた忸怩たる思いを胸に本編を振り返ると、レックスと一緒に前だけを見て駆け抜けたその裏に、いったいどれだけのものがあったのかを思い知る訳です。

例えばファンの登場シーン、カスミのことを知っていると忸怩たる思いになるし、彼女を見たシンのやったことも分かるけど、それはまたファン・レ・ノルンという存在の否定でもある訳で、ドライバーが死ぬとコアクリスタルに戻り、再同調時には過去の記憶を失うというブレイドの仕組みが生み出す闇を感じたりとか。

 

そして何より、レックスからだけではなく、ホムラ/ヒカリからの想いが見えてくることで分かるものが大きい。ホムラ/ヒカリの存在、レックスにあんまり都合が良くない? まあヒロインだからかなと思ってたんです。でも500年前を踏まえて、二人とレックスの出会いから、交わした会話を振り返ると、都合が良すぎるくらいの存在だったのはどっちだよって。その力でイーラを沈めたことで自分の人格さえ封じたヒカリが、レックスの言葉でどれだけ救われたのか。自分たちの消滅を望んでた二人が、どうしてもう一度未来に手を伸ばそうと思えたのか。レックスは確かに前しか、自分しか見えていなかったけれど、その過程で彼女たちの欲しかった言葉をどれだけ伝えていたのか、イベントシアター見返してびっくりしました。それはEDの歌詞がああなる訳だと。

それはまたシンも同じで、イーラが沈み、ラウラを法王庁に奪われ人を憎んだ彼に、かつてイーラの仲間たちと追いかけた希望をもう一度その姿と言葉で見せてくれたのはレックスだったのだと思います。だからこそ、ずっと頑なだった彼のラストシーンがああなったのかと。

あとサタヒコ、どうしていきなりレックスたちを守ってマルベーニ相手に特攻したのかと思ったけど、それは! そうなるよな!! 彼もまた、マルベーニのことは絶対許せないだろうし、レックスたちの姿に思うところがあって当然だったのだなと。

 

500年前に潰えた希望。それを鮮烈に体験させてくれる黄金の国イーラという追加コンテンツを踏まえて、改めて感じる今一度の希望を灯したレックスという存在。レックス自身は過去を背負わずに現在と未来を見据えていて、だからこそ過去からの因果を断ち切り、未来へと希望を繋ぐことができたのですが、絶望の源に何があったのかを知ることで、改めて大きな枠での物語が見えてきます。まず最初はレックスと共に駆け抜けて、そして過去を知って俯瞰することで絶望と諦めを断ち切る物語としての裏打ちを得るという、一度で2度美味しい構造になっているのが凄いなと思いました。

そして、本編の強引なまでにハッピーエンドに持っていくやり方、無理やりじゃないかと思うところもあったのですが、この物語には500年前の挫折を経て、どうしてもハッピーエンドにならなければならない物語としての必然性があったのだなと、改めて感じました。レックスは背負っていないからこそ成し遂げたのだけれど、物語としては500年前を背負っているというか、そうでなければならなかった、そうなることを謳い上げる物語でなければいけなかった。だからこそこの熱量で、この勢いで押し切るだけのパワーが生まれたんだろうなとも思います。