Kalafina Acoustic Tour 2017 ~"+ONE" with Strings~ 12/3 @ 東京オペラシティコンサートホール

デビューした頃から結構な回数のKalafinaライブを見てきましたが、こんなKalafina初めて見ました。感情がこもっているというか、鬼気迫るというか、圧があるというか。ただただ凄かったです。

Kalafinaは元々ボーカル不定の梶浦由記プロデュースプロジェクトみたいな形で、メンバーが固定されてもその流れで梶浦サウンドを表現するユニットというイメージがありました。今回も言っていたし、今までのMCでもKalafinaの曲は遊びが少ないみたいなことは言っていた記憶もあって。ただここ最近、その隙間で如何に3人の表現をできるかみたいなことをやろうとしている感じは凄くあって、行けなかった今年のツアーのブルーレイを見てもびっくりしたのです。曲と歌い手の主従が入れ替わったというか、曲を表現するユニットが、歌で表現するユニットに変わったくらいの大きな変化があるように見えて。

で、アコースティックライブ。やり始めた頃に見に行った時には、いつものバンド編成ライブのバックがピアノになったくらいの印象だったので、今回もそんな感じかなと思っていたのです。

いやまさかとんでもなかった。いつもの編成のライブと同じ曲をやっても、もう完全に別物に昇華されていて、しかも縛りが少ない分、どこまでも歌で勝負する感じ。落ち着いた曲がメインかと思っていたら、今までにないくらいに激しいライブでした。3人の声が調和したり、ある時はぶつかったりしながら、一つの音楽が構築される感じ。2人が歌って、一瞬の静けさから鋭くもう1人の声が入ってくる瞬間。ぜんぜん違う声色の3人の歌が一つになった時の迫力と鳥肌。これまでになく主張が強いというか、魂がこもっているというか、本当に細かいニュアンスまで表現の限りを尽くして、尽くして、それが3人の音楽になっていく感じ、本当に凄かったです。梶浦サウンドが好きとかそういうのをいったん全部横において、ボーカルユニットKalafinaの凄みを見せられて、息を呑んでただただ圧倒されていました。

Kalafinaについては、ずっと上手いとか美しいとかカッコいいとか思っていたし、大好きだったけれど、凄いとかヤバいとか思うことってあまりなかったんですよ、本当に。だから年始ぶりのKalafinaで、どう受け止めればいいのか分からなくなるくらい、いつの間にこんな凄い歌を歌う人たちになっていたんだろうって。

少し前にコリオグラファーが入って見るライブになった時にも大きな変化を感じたのですが、10周年を迎えようとする中、今まさに起きている変化は更に大きいのかもしれないと感じたライブでした。そして、最新で最高のKalafinaはこのアコースティックライブだからこそ見られるものなのかもしれないな、とも。Kalafinaの音楽に少しでも興味があるなら、今、見に行ったほうがいいと本気で思います。

11月のライブ/イベント感想

11/5 だれ?らじ公開録音~もちろん顔と名前覚えてますよね~

そろそろ惰性で聴いている感じがあっただれらじですが、やっぱこの3人めちゃくちゃ面白いなと思った公録でした。ハイテンションで暴走する野村、毒舌後ろ向きなべーせん、かわいいキャラをやりつつ番組のバランスを取るしーまるの3人のキャラクターの組み合わせは奇跡的だなと。

そして例によって1時間死ぬほど笑ったということ以外の内容は一切記憶に残らないので特にそれ以上の感想もなく。会場限定でやった面接を模した即興コントみたいなコーナーがめっちゃ面白かったことはかろうじて覚えている。

 

11/10 Linked Horizon Live Tour 2017 進撃の軌跡カルッツかわさき

進撃の軌跡(CD+Blu-ray)

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 追加公演を除けばツアーラストになる川崎。流石に30本以上のツアーをやってくると、最初に見た国際フォーラムと比べてもまとまりが出るというか、個人個人が上手いという感じじゃなくて、チームとしての表現が全然違ってくるなと思いました。めっちゃ心臓捧げた。

そしてやっぱりサンホラ曲がアンコールで来ると沸き立ってしまうのは仕方ない。というか合唱隊がメンバー紹介で「神の光」をやったのはひええええってなるでしょ。その前に「神話」をやっていただけに尚更。

 

 

11/24 さユり 夜明けのパラレル実験室2017 ~それぞれの空白編『       』~

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青のポンチョを纏ってギターを抱えて、透過スクリーンの向こうで叫ぶように歌う。その声と姿に、きっと歌うために生まれてきたんだなと、それ以外はないのかもしれないなと思わせるような何かがあって、ああ、この子は歌うたいなんだなと感じました。この先でも、この前でもきっと表現できないだろう、今だからこその歌は、酸欠少女の名を冠する通りの形のない息苦しさと切実さに満ちていて。

野田洋次郎提供曲の「フラレガイガール」がこれ以上ないほど完璧にハマっていて素晴らしかったのですが、やっぱり自分の言葉を自分の声で叫んでこその人だと。だから、最後に歌った「birthday song」が、その青さまで含めて素晴らしかったなと思いました。

でもやっぱり、この歌に呪われるには私はちょっと歳を取りすぎたなあと。大好きなんですが、あと10何年か前に出会いたかったと、少し思ったライブでした。

バビロン 3 ―終― / 野崎まど

 

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

 

当然野崎まどなのだから身構えながら読むのです。全く別の話が始まって、それがどんなに丁寧に積み上げられていって、たとえそれがどんなに面白くても、キャラクターにどんな魅力があっても、それは崩すために用意されたものなのだと。

分かってはいたのですが、積み上げたものが無駄ではなくて、ようやくたどり着いた結論を示した上で、ほらだから最初からそう言ってるじゃないとばかりに、あまりにも簡単に崩れていくのを目の当たりにすると、それはやっぱりショックです。そして同時に、ああこれが野崎まどだなと、今回も思うのでした。

自殺法という日本の新域が制定した地方条例は、しかし世界の幾つかの都市に飛び火して、国際問題となりつつあった。そんな中で、アメリカ大統領アレキサンダー・W・ウッドを主人公にこの巻は語られていきます。考える人と呼ばれる、およそ政治家らしくない特性を持った彼と、それを支える腹心たち。それぞれのお国柄が色濃く反映された各国首脳とのやり取り。FBIが報告する「マガセ」という謎の女の存在。そして舞台はサミットへ。

回り道に回り道を重ねて、自殺法というものを考え、考え、考え抜いた彼の辿り着いた結論。この物語自体とても面白くて、読者としてはアレックスに肩入れをして読んでいて、彼の答えはきっと正しくて、だからこそ彼の考える道が一つの救いをこの上ない形で示したことに安堵して、なのにそれは唐突に突き崩される。

回り道の末の回答おめでとう、だってこの物語は自殺法が主眼じゃなくて、最初から善悪の話をしていたでしょうと突きつけられ、その上で純粋悪として立ち現れる曲世愛という存在。シンプルだからこそどうすればいいのかもわからないそれに、いったいどう対峙すればいいのかわからないまま、ただ早く続刊をくださいと思うしかないような3巻でした。本当にどうするんだこれ……。

恋は光 7 / 秋★枝

 

恋は光 7 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
 

 完結、ということはつまり恋の行方にも結論が出るわけで。

もう本当に面倒くさい奴らだな! と思いながら読み続けた恋物語ですが、紆余曲折回り道をしながら辿り着いたところは、「恋」のお話なんだからもう最初からそれしかなかったんじゃないかと、それを確認して踏み出すための道だったのだなという感じ。でもこのぐるぐる回って考えすぎる人たちの恋模様、本当に面白かったし、みんないいキャラしていたなあと思います。

そして、愛情を「本能」と「学習」の2つに分けて、西条のみていた光が何だったのかに繋げる結論もこの作品らしいとは思います。ただ、でも、やっぱり北代さんに、幸せになって欲しかった……。恋には遅すぎたとしても、学習の愛情であっても、それが2人の積み重ねてきた無二のものなのだからいいじゃないかと。

でもまあ性格の悪いことを言えば、恋とは何かしらを経て、そしていつか光らなくなった時に、彼が帰ってくるのは北代さんの隣だと信じています。それはまた逆も然りで、遅くなったとしても最後には隣り合っている2人なのだと。やっぱりああいう関係が、少しずつ形を変えながらでも続いていくという幻想は、見させて欲しいなあと思うのです。

化石少女 / 麻耶雄嵩

 

化石少女 (徳間文庫)

化石少女 (徳間文庫)

 

 部員が足りずに廃部の危機が迫る部活動、対立組織として出てくる生徒会、行動力があって傍若無人な美少女先輩と振り回されながら面倒を見るヤレヤレ系後輩。そして学園を舞台に起きる事件に先輩が首を突っ込んで……というまあベッタベタもいいところな筋立てから繰り出される物語ですが、その探偵とワトソンは麻耶雄嵩が書いたものだったのです、という。だって麻耶雄嵩の探偵だよ? 

 

という感じで後はネタバレありで。

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HiGH&LOW THE MOVIE 3 FINAL MISSION

THE MOVIE2を見て脳がすっかりやられてしまった私はシーズン1からTHE RED RAINまできっちり履修の上、THE MOVIE3を観に行ってきました。結論から言うと素晴らしかったです。あまりに詰め込みすぎだし、ザム2に比べると派手さでは劣りますし、見ている間は色々??? な所もあるのは相変わらずですが、こうやって人心地つくとハイローのことしか考えられなくなるし、語りたくなるし、考えているうちに要素要素の繋がりが脳内で補完されていって、最高の物語が現出していくの、狙ってやってるのであれば天才かと。あんまり狙っているような気はしませんが。

そして何より、数々の要素や伏線を見事に回収してきっちりテーマを描いて見せたのホントびっくりしました。とかく俺の考えた最高にかっこいいシーンやグッと来る設定を優先している感じがあるハイローなので、色々整合性ぶっ飛んでいたり、突っ込みどころは枚挙に暇がないのですが、そんな数々の設定が後付にしては美しすぎる回収をされるのです。同時に結局なんだったんだよという放り出し(RUDEの掘ってた謎鉱石は謎のままだった……)と、回収しながらお前なんなんだよポイントを生み出していくのも凄いのですが。どういうことだよ屋上打ちっぱなし。なんなんだよ爆破セレモニー。なんで二段階なんだよ爆破セレモニー。

今回は九龍グループという大人たちとの対峙によって話はどちらかと言うと重く、アクションも若干少なめ。なので、ザム2の喧嘩祭じゃうおおおおおおみたいなテンションの上がり方はしないのですが、やっぱりハイローらしいトンチキさが終盤に行くほどに隠しきれずにあふれてくるのが最高だと思います。達磨一家の花火ね、本当に最高かよと。CGはあれだけどね。達磨一家最高かと。大馬鹿を大真面目にパワーで押し切るの大好きです。

 

あとは少ないとはいえやっぱりアクションは見どころでした。これまでの作品も含めて、ハイローは色々凄いところがあるのですが、やっぱりアクション。もうとにかくすごい以外の語彙力を失うやつ。生身のアクションも素晴らしいしキャラクターやチームによるバリエーションも豊富だし、チーム入り乱れた闘いの人数の多さも凄いです。あとザム2の時などはカーアクションが半端なさすぎて、邦画はハリウッドなんかに比べたらまあこのくらいという先入観を遥か彼方にぶっ飛ばしていった感じ。お金と才能とやっちまえという勢いが熱いです。

あと今回見ていても感じたのは全ての画面でこだわられた画作り。普通の商店街である山王商店街と東南アジアチックなスラム街である無名街が地続きなのどういう世界だって感じなのですが、同じ作品の中でどちらかが浮いたりしないのは凄いと思います。それどころかあのSWORDの5チームがてんでバラバラのファッションと世界観を持ちながら一つの画面に収まっても、そういうものだという説得力があるのが本当に凄い。アニメとかならまだ分かるのですが、実写でそれを実現するというのは、細かいこだわりとかの積み重ねがなせる技なのでしょうか。

 

相変わらず全員主役を掲げるハイローは死ぬほどキャラクターが多くて、それぞれの物語や関係が多岐に及んで、ザム3だけでもお腹いっぱいを通り越すくらいに2時間に要素が詰め込まれています。でも、今回きちんと方向性を持って話がまとまっていったように、それらがバラバラにならないのは、基本的にハイローのテーマがぶれていなくて、それの変奏が色々な設定、キャラクターによって描かれているだけだからだと思います。

ハイローの話というかSWORDとMUGENの話の軸にはずっと「大人と子供の対比」「正しさと何かを守ること」「生きてる限りやり直せるということ」「変わっていくものと変わらないもの」みたいなテーマがあって、どのチームであろうと度の時代の話であろうと、そこは同じことを形を変えて繰り返しているようなイメージ。

例えばSWORD地区の抗争は子供の世界の象徴で、あの喧嘩祭りは死者が出ないしベタベタな少年ジャンプ的世界観で攻めてくるし(それが良いのですが)、子供の世界のクライマックスだったザム2はの敵役はとにかく悪いやつであるDOUBTで、最終的には殴れば解決した訳です。ただザム3は九龍という大人たちを相手にして、そのやり方ではもう通じないというのが大きなポイントになります。
そして、それはシーズン2からザム1にかけて、MUGENというか琥珀さんが見てきたもので。大人になっていく龍也たちと変われなかった琥珀、子供のまま大人の世界と対峙するのに力だけを求めた結果としてのどうしちまったんだよ琥珀さん。ただ、そうやって道を間違えた琥珀さんも、生きていたからまたやり直せた。ノボルだってそう。そしてTEH RED RAINを経た雨宮兄弟も、兄の死を通じて見せつけられた世界がある訳で。

九龍グループが大人の象徴として描かれる汚さは殺害、隠蔽、政治的な力のかけ方で、それは拳一つで闘ってきたSWORDのやり方との対比になっていて、今回はそこにコブラがどう立ち向かっていくか、またこれまでを経た琥珀や雨宮兄弟がどう向かっていくかになっていたと思います。結局、公害隠蔽を暴いてどうこうなるのかわからないけど、自分たちの正しさを手に喧嘩して解決とは違う道を進んだというのが大事だったのかなと。そこにまた、西郷という清濁併せ呑みながら、己の正義を貫いた大人が最後に後押ししてるのもいいなと思いました。あと、九龍側もまたかつては何かを守りたかったというのが示されるのがまたいいなと。

MUGENの物語の大きなテーマだった変わっていくということは、今回RUDE BOYSや山王連合会が主に背負っっていたように思います。勝ったとか負けたとかそういう感じではなくて、守ったものが何で、変わっていくものが何で、どういうことの筋を通したかったのか、みたいな話。無名街がなくなるだとか、カジノができるか出来ないかではなくて、それも変化の一つで、じゃあ守るべきものは何だったんだという。そういう意味で、スモーキーのどこに行っても家族だは、龍也のMUGENがなくなっても仲間だろに重なるし、ハイローはずっとそういう話だったのだなと。永遠じゃなくて無限、というのも。なので、この先のことはわからないしたとえ九龍が壊滅しなくても、SWORDとMUGENと雨宮兄弟の物語としては、綺麗にザム3でまとまった感じがあります。

終わらない喧嘩祭りに終始してぶち上げテンションで全てを突破するのではなくて、子供の時代から大人の時代へという変化を描いたのは、ハイローは大真面目すぎるくらいに大真面目な青春作品だったのだなあと改めて感じた所でした。

 

ハイローのこれまでの作品に貫かれてきたように感じる、粗をなくすんじゃなくて、粗なんかいくらあってもいいから、とにかく描きたいもの、見せたいもの、伝えたいことに妥協はしないというスタイル。それが全て噛み合って熱が生まれると、減点法で見れば0点だけど加点法でみると10万点みたいな現状を引き起こすのだなあと思います。この感覚は覚えがあって、それが何かというと、キンプリとか、ラブライブ!とか、ガルパンの映画を見ている感じに近い。おれの考えた最強の映画、に実が伴って迫ってくるこの熱量。確信と勢いとライブ感。

そしてこの中の人とキャラのリンクする2.5次元感と多すぎるくらい多いキャラクター、強烈にぶっ飛んだけれどどこかで見たことはあるような設定、キャラクター同士の関係性で話を膨らませていくドライブ感。最近の流行りジャンルを追いかけてきたオタク的には、LDHという触れたことのなかった遥か異郷の地でも、やはりこれが今最新のエンタメなんだ、我々の住んでいる世界は間違ってはいなかったという謎の感動がありました。ハイローを見ることで偏差値が一桁になっていたので勘違いだった可能性もありますが。

ここまで見届けて、そりゃあこれは流行るだろうし、出会えてよかったHiGH&LOWという感じ。最高のコンテンツだと思います。

GODZILLA 怪獣黙示録 / 虚淵玄・大樹連司

 

 アニメゴジラの前日譚は、何故地球から人類は追われ、そして地球は怪獣惑星となったのか、その時代をドキュメンタリー形式で描いた一冊。

様々な人々へのインタビューを通じて、初めて人類が怪獣に相対したアメリカから、世界中に出現し続ける怪獣たち、発生する大量の難民と引金が引かれる人類同士の戦争、そして怪獣を遥かに凌駕したゴジラの出現、追い詰められた人類の前に現れた二種族の宇宙人とのコンタクトまでが描かれていきます。

いきなり怪獣出現とゴジラの進行が描かれた世界地図と年表から始まって、後はインタビューによってそれぞれの時代の空気や立場に基づいた言葉が並べられていくのですが、まあこれが大真面目な大法螺話といった趣で大変素晴らしいです。東宝怪獣総進撃という感じで、子供の頃怪獣図鑑をよく読んでいて割と詳しいと思っていた私的に懐かしかったり、流石に知らないというようなところまでネタが広いのですが、それ故にあまりにも大真面目な語りの中に、こう、突然にマンダとかカマキラスとかフレーズが出てくるのが楽しい。終盤になると異星人からもたらされた技術もあってか、メーサー砲とかスーパーXとか普通に出てくるのがなんというかもうあれです。モゲラも出てくるよ!

そんな感じでテンションを上げながら読んだのですが、一つ一つのエピソードにはばらつきがありつつもグッと来るような話も多く、この時代を如何に人類が生きてきたのかが分かるのがとても良かったです。アニメゴジラはこの怪獣惑星となった地球を人類が取り戻そうとする話のようですが、そこに至るまでの過程として読んでおいてよかったと思いますし、正直あまり期待していなかったアニゴジへの期待値が非常に高まる一冊でした。楽しかった!