あいにくの雨で / 麻耶雄嵩

あいにくの雨で (講談社ノベルス)

あいにくの雨で (講談社ノベルス)

読み終わって思わず「あぁあ……」とつぶやくこの感じ。全てが壊れてしまった虚脱感。麻耶雄嵩の世界に救いなんてものはないようです。
筋立ては高校生三人組が、雪の密室と化した塔で起きた殺人事件を解決しようとするもの。その密室で殺されたのが3人の一人の父親で、その父親は全く同じ手口で母親を殺した容疑者だったりというところから、話は始ってだんだんと連続殺人へと発展していきます。そして同時平行で高校内の生徒会vs体育会の綿密な情報戦。こっちはそんな学校あるかと思うような情報戦やスパイ活動が繰り広げられます。
ただ、読んでいてどうにも地味な印象が。キャラクターの魅力という訳でもなく、物語に盛り上がりがあるわけでもなく、淡々と話が進んでいくような印象。青春ミステリとしてもっと面白くできそうな気がして、そこら辺はいまいちかなぁと。このタイプの頭の良すぎる高校生は、最近のライトノベルを読んでると全然変に感じないというのはあるのですが。
そしてラストは相変わらずの崩壊感。しかしながらここもやっぱり地味な印象で、鴉や夏と冬の奏鳴曲のような天地がひっくり返ったような衝撃はないです。ただ、じんわりと首を絞められるような気持ちの悪さ。一つの間違いから、すべてが壊れてしまった事件が目の前に姿を現すのがひたすらにやるせないです。
ただ、日常が壊れる様を描くなら、もう少し日常が楽しそうに描かれてて欲しいなぁとは思いました。
満足度:C+