火目の巫女 巻ノ二 / 杉井光

火目の巫女〈巻ノ2〉 (電撃文庫)

火目の巫女〈巻ノ2〉 (電撃文庫)

前作できっちり終わってるのにどうするのかなぁと思ったら、本当に真っ当に続編でした。あぁ、こういうパターンの構成もあるかという感じ。
前作で火目を目指した末に、様々な犠牲の上に成り立った国の形を見せ付けられ、それに対してまったく何もできない己の無力を嘆いた伊月と、全てを呪い国を滅ぼしてしまおうとした佳乃。この二人を中心に廻る物語は、一端落ちるところまで落ちたからこそ、それでもそこから上に昇ろうという意志の強さが光る正統派なストーリーになりました。こう考えると別に変わった構成でも無いです。
という訳で、二人が再び歩み始める物語。先代火目の時子が化生に堕ちかけて、それを追いかける中で二人の運命と、二人の周りにいる人々の運命が交錯するような話です。相変わらず主役の二人に豊日も含めた登場人物たちが自分で全てを抱え込んで思い詰めがちなので痛々しいですが、この痛々しさが癖になるという面も。話は前向きになっても、全体としては悲壮なトーンが漂います。透明感のある凛とした文章の中の抉る様な痛切さが好み。前半ではそういう部分がピリピリしたムードを作って息苦しさも感じますが、後半の畳み掛けるような心理吐露はグッと来るものがありました。
ただ、話の流れの中で双葉というキャラクターが佳乃の物語のために存在するだけに見えたり、村での出来事もややご都合主義的だったりという気もしたり。あと、もしかしたらこの人は前向きな物語はかけても、幸せそうな物語を書くのは苦手なのかもしれない……というのは余計な勘ぐりでしょうか。
たくさんの伏線も張って、次は豊日が語るこの国の成り立ちの物語でしょうか。とりあえずまだ追いかけます。
満足度:B