レジンキャストミルク4 / 藤原祐

蜜の表紙が素敵。
この小説が大好きなのですが、一体何がそんなに面白いのだか自分でも説明できないというのが不思議です。小説の出来という意味では、傑作というほどではないと思いますし、粗も探せば結構でてきそう。構成や展開、キャラ造形に微妙な不自然さを感じる部分がなくもない。
ただ、この小説が私にとってすごく面白いのも確かだから良くわからない。皮膚感覚で面白い。ちょっとした文章が、キャラクターの行動が、ストーリー展開が、どうしようもなくツボにはまってしかたが無いのです。この心地いい悪趣味さ。空気が合うとしか。
そんな私の事情は置いておいて、レジン4巻は3巻の続き。所謂下巻。ほのぼの×ダークということで、シリアスでダークで、むしろ悪趣味な展開の中にぽつぽつと笑わせてくれるようなシーンが。正直流れの中で浮いている気がしなくも無いのですが、これがないと本当に暗澹とした小説になりそうなのでバランス的にこれでいい感じ。ネアが面白い。
話は上巻を受けて、無限回廊側と晶側の戦い。非常にわかりやすい構図で熱いです。晶と硝子の成長、蜜や殊子の背景に、蜜と君子の過去といった要素が積み重なって異能バトルへ繋がっていく展開。しかし殊子の不発爆弾はちょっと反則なのでは。各能力の細かい規定がされてないので、何がどこまで有効なのかがイマイチわかりません。しかしそれはそれでおいておけるくらいに面白かったのでいいか。
テーマは人形の話でした。人形に偏愛を注ぐ少年も、人形として育った子供達も、人形のような子供達も、それぞれ何かが壊れているのが相変わらず悪趣味。虚軸達の感情の動きや倫理基準といったものがどう欠落してるのかがあまりよくわからないのですが、半分以上壊れてるのにギリギリで踏み外してないという不安定さが、何となく良いのです。
それにしても蜜が素敵。戦闘装束はゴシックドレスだなんて。欠落ゆえの不器用さと君子への思いと、全てを背負い込む強さと弱さが大好きです。ラストシーンはグッとと来ましたよ。
ちょいネタばれ。2段エピローグが相変わらずお見事。3巻であそこまで救いのない展開を予見させておいて、そこからまさかの不意打ちハッピーエンドにつなげるのは卑怯すぎです。君子が「ひめひめ」と言ったシーンで不覚にもじーんとしました。
相変わらず壊れそうな日常を取り繕いながらも少しづつ削られていくジリ貧展開ですが、ここがターニングポイントのようなので、次あたりで本当に全てが壊れかねない大きな展開もありそう。非常に楽しみです。
満足度:A