ハチミツとクローバー 10巻 / 羽海野チカ

ハチミツとクローバー (10) (クイーンズコミックス―コーラス)

ハチミツとクローバー (10) (クイーンズコミックス―コーラス)

完結。
この物語に、そして作者に感謝の言葉を。
しっかり綺麗に締めてくれたという気と、駆け足過ぎないかとかここは何でこうならないんだみたいな不満と両方あるんですが、時間がたつにつれて前者がどんどん優性になってきました。あとは、本当にこの物語は大好きだったなという感慨だけです。
大学生活と5人の仲間達。懸命に悩んで恋して生きた5年間。その空間の持つあまりの幸せさに目を奪われていましたが、時間が止まることなんかはなく。それぞれがそれぞれの思いを胸に、この場所から巣立っていきます。ラストで、「あーあ、これで終わっちゃった」ではなくて、「ようやく彼らの歯車が回りだした」と思わせてくれたこと、散々幸せな今を描きながらも未来への希望を見せてくれたこと。そして、5人の恋愛は、5人の間では一つも成就しなかったけど、それでもかけがえない時間だったと、とても大切なものだったと思わせてくれたこと。たくさん笑えて、たくさん泣けた、良い物語を読んだのだなぁと思いました。

はぐのケガはストーリー上仕方なくても辛いものでしたが、その中で彼女の意志の強さは輝いていました。愛情よりも何よりも、描くことが自分の人生だと決断したのは強いんだと思います。修ちゃんへの告白シーンで本当にそう思いました。修ちゃんがどこからはぐを好きになったかは気になりますが、なんか犯罪の香りもするのでスルーで。
森田と竹本は森田の話はいまいちつかみきれなくて、浮いた感じが離れなかったのですが、竹本の話は良かったです。例え結ばれなかったとしても、はぐを好きになったことは間違いじゃないと、自分の5年間を肯定して前に進めるのはやはり強さ。
この作品のキャラクター達には未来があって、そこでの幸せは今この場で彼らが結ばれることではなく、この5年間を糧にして進むことで見つかるのでしょう。その前向きさと強さがもたらした結末は、先のビジョンもなく安直に結ばれるエンディングよりはずっと良かったと思います。ラストはやっぱりグッときました。ハチミツとクローバー
収録されてる短編もなかなか良かったです。切ないマンガが本当に上手いなぁ。
満足度:A