- 作者: 上月雨音,東条さかな
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2006/12
- メディア: 文庫
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「最悪は無い。必ず犯人を見つけ、爆弾を解体し、そして生き残る。こんなところで、負けたりなんてしない」
第一部完ということで、デッドエンドコンプレックスの話にようやくケリがつきました。終わってみれば落ち着くところに落ち着いた感じではあるのですが、そこに至るまでの過程はなかなかお見事でした。純愛系ミステリーの看板にも偽り無し。
話としてはデッドエンドコンプレックス関連で狙われた志乃ちゃんと僕が、デパートでの爆弾事件に巻き込まれる話。逃げられない状況とせまりくるタイムリミットの中での犯人探しは、ミステリー的にも面白かったです。もっと混乱するような気がしなくもありませんけど、実際のところはわからないですし。犯人探しの推理は裏をかかれました。なるほど、そういうことかという感じ。
でもこの巻の真骨頂はやっぱりその後のシーン。道を踏み外しそうな危うい存在としての志乃と、常識人としての僕。その二人がたとえ困難でも描く未来と絆の強さにはやられました。確かにこれは純愛系。僕が常識的な考え方を持ってるが故に、二人の関係もデッドエンドコンプレックスというこの作品自体の生と死に関する考え方も、ギリギリで当たり前と呼べるラインにとどまっているんだなと思いました。僕が志乃の鞘であり、家族であり、共に生きるものであると言うのは面白い関係性だと思います。
ただ、このシリーズはどうしても合わない部分があるというか、考え方に疑問を感じたり、ぎこちなさを感じてしまう部分があります。私の好みの問題なのでなんとも言い難いですが、テーマ的にもキャラクター的にも話としても直球で好みの系統だけに、逆に選り好みが激しくなっているのかもしれません。
あと、この巻は志乃の行動が基本的に客観で描写されてたのが良かったかなと思います。その方が底の深さと言うか、得体の知れなさというものが感じられますし。そして相変わらずイラストは良かったです。
満足度:B+