バカが全裸でやってくる Ver.2.0 / 入間人間

「小説家志望」は「小説家」になって、仕事として小説を書き始めて。そんな主人公が直面する困難や、知り合いの作家たちとの交流を描いた青春小説のような何かでした。
ついにデビューした「僕」のデビュー作はあまり売れずに、編集者のアドバイスで可愛い女の子を続編に出したけれどいまいちパッとせず、編集者の「売れる」アイデアを使った新シリーズがヒットしたけど続刊を出すのが死ぬほど辛くて、けれど出さなくてはいけなくて。ただ好きなものを好きなように書けば良いアマチュアではなく、プロの仕事として小説を書くなら売れなければいけないし、求められたものを書かなければいけないし、締め切りは確固たるものとしてあるし、みたいなお話になっています。そんな風に苦しんで苦しんで胃を痛めて、それでもやっぱり小説が好きで書かずにはいられない小説バカじゃないと、小説家なんてなれないのかなと思ったり。
そんな主人公の話にどうしてもオーバーラップするのが作者である著者である入間人間のこれまで。2作目の受けそうなシリーズって明らかに「電波女と青春男」みたいで、月刊入間人間も実際にやっていたことだしという。そう思って読むと、色々と創作裏話が漏れでているようなところもあって、メタな楽しみ方もできます。ただ、そんなにストレートな話を書くわけがないのもまたこの作者で、最後の最後に全てをはぐらかすような大仕掛けが。そんな半分メタみたいな話を、更にメタな構造にして煙に巻くようなラストなのに、どこか爽やかでなんとなく前向きな辺りも、また作者の青春小説らしいと思いました。
そして小説家になった僕の生活自体も魅力的でした。特別なことは何も無いけれど、温度感というか、空気感がとてもしっくりとくるような感じ。「師匠」である甲斐抄子との交流とか、たまに顔を出す例のバカとの会話も脱力感があって良い感じです。特に甲斐抄子の愛すべき変人ぶりは素敵ですし、主人公と彼女の、恋人でも友人でもないけれど気の置けない感じに近い距離感は、これまたすごく居心地の良さを感じるものがあって良かったです。
そんな感じで入間人間の青春ものが好きなら楽しめる一冊でした。面白かったです。